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安田 好隆
ポルトガル

ポルトガル通信
~fonte/フォンテ(泉)~

齋藤 祐太
1992年8月4日生まれ。上智大学ポルトガル語学科所属。昨年9月よりポルト大学に1年間の語学留学中。中学校で本格的にサッカーを始めるも、自身の限界を知り早々にスパイクを脱ぐ。大学入学後は、学内にフットサルクラブを創設するなど、フットサル活動に転身。ひょんなことから興味を持ったポルトガルサッカーのとりことなり、現地では毎週末スタジアムへ足を運ぶ。ライターや通訳として、ポルトガルと日本を結ぶことを目標とする。
Twitter: @yutasaito_pt

ポルトガル

■ビラス・ボアス流モチベート術2

2014.6.23

前回に引き続き、ポルトガル人監督アンドレ・ビラス・ボアス氏が用いる、選手たちへのモチベート術をご紹介していきます。

プロ選手としての経歴がないというハンデを抱えたビラス・ボアス監督は、血のにじむような勉学と、ボビー・ロブソン氏やモウリーニョ監督ら先人たちの教えを融合して、独自の監督像を形成していきます。彼がトレーニングやミーティングに持ち寄る方法論には、指導を受けた選手たちの多くが「見たことのないものだ」と口をそろえるのです。

例えば、ビラス・ボアス監督は重要な試合の前に、選手たちに短い「ビデオ」を見せることがあるのですが、ここにも彼の工夫の跡が見受けられます。

シーズンの始まりを告げる、前年のリーグ王者とカップ王者同士の対戦「スーパーカップ」、ポルト対ベンフィカ戦の前には、前年のリーグチャンピオンであるベンフィカの選手たちがタイトル獲得を祝っている映像を、チームの選手たちに見せました。実は、このビデオは、この試合の前だけではなくそれ以前のプレシーズンでも継続的に流していたといいます。その段階から、前回ご紹介したように、スーパーカップの獲得を最初の目標に据えて「前年の悔しさを晴らさなくてはならない」というモチベーションを、選手たちの潜在意識に植えつけようとする狙いがありました(試合はポルトが2-0でリベンジに成功)。

ところが、このシーズンの終盤、ヨーロッパリーグ決勝のブラガ戦前には、趣旨が正反対のビデオを選手たちに見せたのです。映像に映しだされたのは、この大会においてポルトの選手たちが見せてきたすばらしいプレーの数々だったといいます。「ここまで美しいプレーをしてきた君たちなら、この決勝でも同じように勝てる」。監督のメッセージを選手たちが感じとるのに、そう多くの説明はいらなかったでしょう。

このように、手を替え品を替え、ありとあらゆる工夫を凝らして選手たちの精神面を燃えあがらせるビラス・ボアス監督独特の手法は、当時のキャプテンであったエウトンからも称賛を受けます。

ビラス・ボアス監督は、自身でも「試合中、監督はスーツを着てベンチのわきを歩き回り、ときどき小走りを見せる以上のことは何もできない」と発言しており、試合の勝敗は日々のトレーニングの成果によってほぼ決まるという姿勢を取っています。そのため、記者会見などでハーフタイムの指示内容を聞かれても、「落ちつきとプレー基準を求めた」などと、記者を困らせるような返答をすることもしばしばあります。しかし、これだけの指示しか出してないのにも関わらず、選手たちは「監督のハーフタイム中の指示はとても重要だった」と口をそろえるのです。

実際に、日々のトレーニングでのパフォーマンスを見て、選手たちの能力に確信を持っているビラス・ボアス監督にとっては、この程度の修正で十分であり、選手たちもそれが心地よいのでしょう。先述のエウトンは、監督のハーフタイム中の指示についてこのように述べています。

「例えば『勝つためにプレーしよう!』なんて言葉は、僕ら選手たちにとっては大きな意味も持たない。そんなことはいつも耳にしているからね。でも彼は違うんだ。いつも新しい何かをプラスしてくれる。それが素晴らしいんだ」

おそらく、プロ選手として実績のない若手監督がチームを率いる際に最も苦労するのは、いかに選手たちの信頼を得るかというところではないでしょうか。ビラス・ボアス監督は、このように、ポルトというビッククラブの選手たち、また、リーグチャンピオンを逃したというような当時のチーム状況に適した方法、つまり、チームのメンバーとその置かれた状況で用いるのにふさわしいモチベート方法を、独自の形で試行錯誤して、選手たちの心をつかみました。そして、彼がシーズンを通して最も注視した「選手たちの精神面の充実」こそが、ポルトを3冠という偉業達成に導いた秘けつなのです(先述のスーパーカップを含めるとシーズン4冠)。

シーズンの終盤に勝ち星を落としているチームを見かけたとき、そのチームの選手たちからモチベーションを感じられないようなら、もしかしたらそこには監督の手腕が大きく影響しているのかもしれませんね。

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今冬、ビラス・ボアス監督にお会いしましたが、
ひとりの人間としての人柄も温厚で素晴らしい方でした

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