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西村 亮太
メキシコ

メキシコ通信
~Querer es Poder~
(意志あるところに道は拓ける)

西村 亮太
大阪府出身。筑波大学大学院にてコーチング学を修了し、2010年8月にメキシコへ。
Cruz Azulでの研修後、CFPachucaの支部にてU-16監督を務める。その後Cruz Azulに選抜スクールのU-12監督、U17,U20にキーパーコーチ兼アシスタントコーチとして在籍。2014-15シーズンより同国のSantos LagunaにU17,20アシスタントコーチ兼分析担当として移籍し、15-16シーズンより同クラブ保有のメキシコ3部所属チームSantos Laguna Premierの第2監督となる。メキシコサッカー協会公認ライセンス-レベル4(日本でいうS級)を2013年12月に取得。

メキシコ

■Copa Chivas(コパチーバス)から見る“日本”と世界の『差』と『違い』⑤

2014.5.7

みなさんこんにちは。

今回は第33回、34回とテーマにしてきた『判断』と『決断』の観点から他国のチームが僕の目にどのように映ったかということを、このテーマのまとめとしたいと思います。諸事情により期間が空いてしまったので、もう一度第33回34回のコラムを読み返した後に今回のコラムを読んでいただけると、より読みやすいものになると思います。よろしくお願いします。

それでは本題に入っていきましょう。

最初に、僕が今大会で見た海外からの招待チームを、この『判断』と『決断』といった観点から分析してみると、イングランドのリバプールFCの選手たちは、とても明確な『判断』と、それに沿った『決断』の下にプレーしていましたが、その中で状況に応じて『判断』を翻す『決断』ができていた選手は見当たらず、相手チームがその『判断』に対応してきたときに行き詰まっていました。

続いてコロンビア代表ですが、チームで共通した『判断』とそれに応じた『決断』、状況に応じて『判断』とは違う『決断』も取れる好チームでした。しかしその『判断』を翻した『決断』の際に、「実行」の部分で正確性に欠けることが多かったです。つまり『決断』しきれていなかったのかも知れません。

最後にブラジルのECビトーリアは、チームとしての『判断』とそれに沿った『決断』、またはその『判断』を翻す選手自身の『決断』が、置かれている状況に応じて絶妙なバランスが保たれていました。さらには『決断』した後の「実行」の部分も非常に高いレベルでした。

少し具体的にECビトーリアの話をすると、コロンビア代表との試合の際に前半早々に退場者を出してしまい、試合の大部分を数的不利で戦うことになったのですが、退場者を出してからが圧巻でした。状況によって『判断』の変更を強いられたのですが、各々がそのチームとしての『判断』を尊重し、全員がそれを見事なまでに非常に強い『決断』を持って実行していました。そんな状況の中でも勝負の局面ではその『判断』を翻す『決断』も見られ、その結果として流れを引き寄せつつ最後にはPKにて勝利しました。

この試合は本当に感動しました。“変化”に対応できる個人能力の高さに、ブラジルサッカーの底力を垣間見た気がしました。

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U17メキシコ代表vs.U17クルスアスル

この『判断』と『決断』というテーマについてある方と話していたときに、「実行するときにその『決断』というプロセスがあるかないかで、個人の中に“経験”として蓄積される度合いに、大きく差が出るのではないか」という仮定に至りました。

ここでいう“経験”とは「自分が実行した行動が、戦う術として試合中に起こる状況を有利に運ぶために“使えるか使えないか”という成功、失敗体験をもとに個人の中に形成される、『判断』する際に【チームとしての戦い方】と並んで大きな影響を及ぼすもの」とします。

つまり、個人としてこの“経験”を持っているか持っていないか、または持っているとしたらどの程度持っているのかということが、【チームとしての戦い方】の『判断』と並んで、最終的にプレーを決定する際に影響を与えるのだと思います。この“経験”の有無とその使い方が【チームとしての戦い方】だけではうまくいかなくなったときに、応用が利くか利かないかという部分で差となって出てくるのではないかとも考えられます。

個人としても、チームとしてもプレーの幅を広げてくれるのはこの“経験”であり、この“経験”を蓄え『判断』する際の要素として有効活用できるようになるためには、プレー決定のプロセスにおいての『決断』の有無が大きなカギを握っているような気がします。

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U20ケレタロvs.U20クルスアスル

人にいわれて行った行動の結果より、自分で考え決定して行った行動の結果のほうが、たとえうまくいかなかったとしてもその人の今後に生きるということは、ピッチの内外を問わずよく話されていると思います。

僕はメキシコでの今までの経験を振り返ると、自分で『判断』して『決断』しなければならない機会が日本にいたときよりも多いと思います。それはほんのささいなことである「目的地まで行くのに何時に出発し、どのようなルート、交通機関で行くのか」などということから始まり、「この契約は自分にとってプラスになるのか
などといった人生を左右しかねないであろうことまで、本当にさまざまなことを自分で『判断』し『決断』してきました。もちろん成功したこともあれば失敗したことも多々あります。

メキシコで一個人が日本に比べて『判断』と『決断』を強いられる機会が多いのは、この国のあり方や文化的要素が大きく関係していると思います。メキシコでは6歳の子が小学校に行く、行かないというところから『判断』と『決断』を迫られ、サッカー界においても同じように幼少期からその後の人生を左右しかねないような『判断』と『決断』をしなければなりません。彼らは“なんとなく”サッカーをしているのではなく、『判断』し『決断』した上でサッカーをしています。

ここには“一般的な基準”による良し悪しでは計れない、数多くの人生の形があります。『その国のサッカーは、その国の文化によって決まる』といった類の話を多くの人が聞いたことがあると思います。今大会で見たメキシコ、コロンビア、ブラジルといった中南米の国々では、国の構造、文化的観点から日本に比べてピッチ外にて個人が“安定した決まり”のない状況下にて『判断』と『決断』をする機会が多いのだと思います。ゆえに前述した一文のように、その積み重ねがピッチの中にも現れるのだと思います。

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U20モレリアvs.U20クルスアスル

では今の日本は“整いすぎ”てダメなのか、というとそうではないと思います。

僕はいろいろなチームを見ていく中で、チームとしての『判断』を翻した個人の『決断』を、チームとしてサポートする雰囲気のあるチームと、個人は翻した『決断』をするものの、それがうまくいかなかったときにチーム全体としてサポートする雰囲気がなく崩壊していくチームの二種類があることを感じます。

「集団行動が得意」という日本人の特性を生かし、個人が“決まり”を“破った”としてもそれを集団としてサポートする、まさに前述したような「チームとしての『判断』を翻した個人の『決断』を、チームとしてサポートする雰囲気のあるチーム」を日本人の長所を生かして作り上げることができるのではないでしょうか。「集団行動が得意」と「“決まり”を“破る”」という、一見すると矛盾しているように感じるかもしれない両者の中に「チームとして個人が“決まり”を“破る”ことができる『安心感』を生み出すことで『決断』を促し、その結果もチームとしてサポートする」といったような相互関係を作ることはできないでしょうか。

ただここで重要なのは、「集団行動が得意」だから「チーム」になれる、といったような簡略的な方程式は成立しないということです。「チーム」になるには「集団行動が得意」以上の“何か”が必要だと思います。

日本人選手や日本のチームにはその特性を踏まえた上での働きかけが、メキシコではメキシコ人選手やメキシコのチームの特性を踏まえた上での働きかけが必要なのだと思います。

そこに監督の手腕が問われるのだと思います。

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