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平安山 良太
ブラジル

ブラジル通信
~Futebol arte“王国にGingaを探す旅”~

平安山 良太小学生よりサッカーを初めるが、ケガにより早期挫折。若くして指導者の道へ。日本で町クラブ、部活、Jクラブで幼稚園~大学生まで幅広く指導者として関わり学んだ後、海外へ。東南アジアのプロクラブや代表チームで研修の後、ブラジル1部リーグのAtlético Paranaenseでアシスタントコーチを務めた。2014年5月からはクラブワールドカップでも優勝したSC Corinthiansでアシスタントコーチを務めるかたわら、日本に向けて情報発信を始める。2015年10月からはAvai FC、2016年前半はJ3のFC琉球通訳、後半からはコリンチャンス育成部に復帰。ペルーやアルゼンチンなどにも顔を出す。
twitter:@HenzanRyota
mail:ryota_henzan@yahoo.co.jp

ブラジル

■王国ブラジルを、世界最速ワールドカップ出場と、FIFAランク1位に復活させたチッチ監督の手法とは!?

2017.05.09

Oi tudo bem??(お元気ですか?)

2016年のリオオリンピックから現在の2017年前半は、ブラジルサッカー界にとっては久しぶりに良いニュースが続いています。

リオオリンピック優勝に始まり、A代表もロシアワールドカップ南米予選8連勝。
世界最速でのワールドカップ出場決定と、FIFA世界ランク1位返り咲きという、まさに王国の復活を象徴する出来事の連続でした。

そのキッカケは何といっても監督交代。

ドゥンガ政権時代は、コパ・アメリカ1次リーグ敗退、ワールドカップ予選も2勝3分1敗と、世界最強と呼ぶには少し寂しい結果でしたが、チッチ監督になってからは8戦全勝。

ブラジル国民もサッカー王国としての誇りを取り戻しつつあります。

ドゥンガ監督は、2010年ワールドカップでそれまで監督経験がないながらも、当時優勝候補とされていたブラジル代表監督に就任。しかしベスト8に終わりました。
その後国内クラブの監督も務めますが、10カ月で解任。

国民の間でも、1番人気だったチッチ監督に断られたとはいえ、なぜ次点がもう一度ドゥンガ監督に任せるという案だったのかは、かなり疑問視されていました。

もともと第1候補だったチッチ監督は、コリンチャンスの監督としてブラジルリーグ優勝。南米版のチャンピオンズリーグに当たるコパ・リベルタドーレス優勝、さらに2012年にはチェルシーを破って、クラブワールドカップを制し、世界一に導いた名将です。

ブラジル国内では、「グアルディオラ監督やエンリケ監督、ジダン監督など欧州の監督は自国選手だけでなく欧州各国の選りすぐり、そして南米の最高選手も使って世界一になっているが、チッチ監督は欧州選手もいなくて南米でも2番手の選手たちを率いての世界一。基本的には国内のブラジル人選手を使っている。本当に監督として上なのはチッチではないか?」なんて声も聞こえてきます。

近年世界一になったバルセロナやレアル・マドリードを見ても、たしかにスペインのクラブではありますが、スペイン人は半分もプレーしていないほどの豪華な世界選抜状態です。

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そんなチッチ監督ですが、何がそんなに良いのか?

チッチ監督とグアルディオラ監督の下でプレー経験のあるダニエウ・アウベス選手は"プログラマドポルチャット"でのインタビューで、チッチ監督を「ブラジルのグアルディオラ」と形容しています。

さらに「世界には素晴らしいサッカー指導者なら沢山いるが、チッチは人としても素晴らしく、両方兼ね備えた人材はなかなかいない」と信頼を寄せます。

ドゥンガ監督との違いを聞くと「ドゥンガは情熱的で働き者。しかしチッチ監督のほうが監督としての経験値があるだけでなく、チッチ監督は欧州にも勉強に行ったり、論理的な勉強もしていた」

「ドゥンガ監督は常に我々に叱咤激励をしてくれた。ただチッチ監督はそのときの状況や個々の選手に合わせてさまざまな引き出しから解決策を見つけることができる。チッチ監督はあまり怒鳴ったりはしないタイプだね」

「私はチッチ監督の監督としてのキャリアはもちろん尊敬しているし、勝者としても尊敬している。加えて彼には人生の経験値が高く、自信を失っていた我々とうまくコミュニケーションをとって自信を回復させてくれた。ロッカールームの雰囲気を変えたんだ」

「チッチ監督は選手を良く知っている。各選手がどんなキャリアを歩んできたのか、努力して情報も集めているんだ」

これはチッチ監督本人も、"エスポルチエスペタクラール"のインタビューの中でブラジル代表の1日について聞かれた際に明らかにしています。

「朝はスタッフや選手、みんなで朝食をとる。まずはスタッフ、そして選手に声をかけてあいさつしていく。選手にはそれぞれ違うキャリアがあるから、それを事前に知っておくことでコミュニケーションをとれるし、深く選手を知っていくことで自信を持たせる方法も見えてくる」と述べています。

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チッチ監督は試合分析や、サッカーにテクノロジーを用いるなど常に学びを欠かしません。

「現代サッカーにはテクノロジーを用いない選択肢などない。選手には試合分析の映像を見せる。特にセットプレーだ。普段選手たちは違うクラブチームでプレーしていて、違う戦術で戦っている。そこを合わせていかなくてはならない」

チッチ監督はコリンチャンス時代、常にトライアングルを築いてボールを保持する戦術をとっていました。

ただ三角形を作ってゆっくり回すだけでなく、三角形の各選手が動き回り、ときにはスプリントも交えながら相手を崩していました。
バルサのそれよりよりスピーディーな三角形といえます。

南米は発展途上国だからか、90年代のJリーグ創設期のころに日本サッカーに貢献したブラジル人選手たちのままのイメージがあるのか、なぜか日本では、あまりブラジルで戦術やテクノロジーが使われているイメージがありません。

当然ですがJリーグ創設期から日本サッカーが進化するように、ブラジルだってそのころからまた進化しています。

チッチ監督の率いるブラジル代表やコリンチャンストップチームに限らず、コリンチャンスの育成部でも分析チームが常駐し、分析部屋があります。

練習ではGPSや心拍計が搭載されたスポーツブラを着用し、その選手の走行距離、心拍数、スプリント回数を測ることもあります。

テレビでは常にサッカーの試合を見られますし、試合分析をする番組、新聞などは全然日本より多いです。

日本だと専門雑誌や専門サイトなどがその役割を担っているのですが、ブラジルではわざわざ専門にしなくても、単純にサッカーに興味ある人が多いので一般紙でも扱ってくれています。

もちろん戦術分析専門サイトもあります。
そういった専門サイトの閲覧者数も日本より多いです。
単純にサッカー人気が高いのですから。

ブラジルの育成指導者は大学出身者も多く、例えば栄養学や筋トレ理論の話をしても高いレベルです。

日本人が見ているブラジルのイメージがひと昔前になっているな、と感じます。
ブラジルでサッカー指導者をしている日本人はほとんどいないのでしょうがないとも思いますが、日本がブラジルに追い付こうと思ったとき、ブラジルの本当の現在地を知らないと難しいとも思います。

そうでないと30年も前の"サッカー選手"に"サッカー監督としての知識"で追いついただけで満足してしまい、"現在のサッカー監督の知識"には知らないままに気付きもせず引き離されてしまうでしょう。

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