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平安山 良太
ブラジル

ブラジル通信
~Futebol arte“王国にGingaを探す旅”~

平安山 良太小学生よりサッカーを初めるが、ケガにより早期挫折。若くして指導者の道へ。日本で町クラブ、部活、Jクラブで幼稚園~大学生まで幅広く指導者として関わり学んだ後、海外へ。東南アジアのプロクラブや代表チームで研修の後、ブラジル1部リーグのAtlético Paranaenseでアシスタントコーチを務めた。2014年5月からはクラブワールドカップでも優勝したSC Corinthiansでアシスタントコーチを務めるかたわら、日本に向けて情報発信を始める。2015年10月からはAvai FC、2016年前半はJ3のFC琉球通訳、後半からはコリンチャンス育成部に復帰。ペルーやアルゼンチンなどにも顔を出す。
twitter:@HenzanRyota
mail:ryota_henzan@yahoo.co.jp

ブラジル

■サッカー通訳という仕事

2016.08.05

【ブラジルオリンピック代表紹介】

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Boa tarde !!(こんにちは)

リオオリンピックが迫ってきました。
僕のいるサンパウロではまだまだ盛り上がりきれていないものの、テレビでは連日リオオリンピック関連の放送が流れはじめ、恐らく会場であるリオはもっともっと熱気を帯びているのではないかと期待しています。

世界唯一の歴代ワールドカップ全大会出場と、世界最多5回の世界制覇を誇るブラジル代表ですが、そのブラジルが未だ獲得したことのない唯一の主要タイトルが、このオリンピックでの金メダル。今回は自国開催、しかもワールドカップベスト4で惨敗したことの汚名返上のためにも、優勝は必ず達成しなければならないノルマとなっています。

注目はやはりスーパースター、ネイマール。
近年ブラジル代表が敗退した大会のすべては、ネイマールが出ていない試合で起こりました。良くも悪くもネイマール依存性といわれてしまいますが、ネイマールが大会を通して出場できれば優勝も近づくでしょう。
今大会のブラジルは攻撃陣が大会屈指の強さを誇り、サントスFCの19歳ガビゴル(ガブリエル・バルボサ)と、パルメイラスの19歳ガブリエル・ジェズス、2人の19歳ガブリエルコンビが若手期待株とされています。
当然、2人はヨーロッパからもオファーが引っ張りだこですし、大会後には世界的有名選手になっているかもしれませんね。

推進力のあるバイエルンのドグラス・コスタがケガで不出場となってしまったのは戦力的に痛いところ。
また、シャフタールに招集拒否されてしまったフレッジも、MF選手層のバランスに影響がありそうです。
ドゥンガ監督の大会直前での解任、新監督のミカーレ監督の準備期間不足の影響も心配されます。

ただ、コリンチャンスのファン界隈では追加招集で入る元コリンチャンスで昨年ブラジルMVPとしてコリンチャンスのブラジル優勝に大きく貢献したレナト・アウグストの活躍に胸を膨らませる方々が多く、コリンチャンスがまた一つ有名になればと思います。

【通訳について・スラング】
さて、私はリオオリンピックでは、とあるメディアの通訳と現地案内人を務めます。
日本のみなさんにリオオリンピックを楽しんでもらえるように精一杯頑張りたいと思います。

私はポルトガル語とスペイン語で通訳という仕事をしたことがあります。
スペイン語でアルゼンチン人の日本挑戦サポート、ポルトガル語でFC琉球のブラジル人選手の通訳をそれぞれ経験しました。

じつはサッカー通訳というのはネイティブなら誰でもすぐにできるというわけではなく、例えば日本人でも興味のない競技の用語だったり、ビジネス用語やパソコン用語など、精通していなければその国の人でもわからない単語があるように、サッカーにある程度詳しくないとわからない単語というものがあります。

ブラジルサッカーの場合だとスラングも多く、例を挙げると
・股抜き(カネッタ) → ボールペン
・スライディングタックル(カヒーニョ) → ミニカー
・鳥カゴ(ボビーニョ) → お馬鹿ちゃん
・GKのイージーミス(フランゴ) → 鶏肉
・大きく外れたシュート(バラォン) → 気球
・楽勝(ショコラチ) → チョコレート
・相手の頭上をボールが通過するドリブル技(シャペウ) → 帽子
などがあります。

また、表現の違いもあって、例えば“DFラインの裏”は、“センターバックの背中”という表現をします。

ただの言葉の直訳だと伝わらない表現方法というものが、日本語にもポルトガル語にもあるんですね。

【通訳・文化背景の違い】
言葉を訳すときに難しいものの一つに、お互いの文化の違い、背景の違いがあります。

例えば日本のサッカー界だと、サッカーを他の競技と比べたり、例え話によく出てくるのはやはり野球です。
相撲という場合もあります。

ただ、野球や相撲のルールも知らないブラジル人にとっては、野球や相撲で例えたりしても全然ピンとこないんですね。

1度経験したものだと、
「相撲には押しだし、上手投げ、突落しなどいろんな技があって、そのいろんな技があるからこそ相手は迷う。一つしか攻め方がないと対応し易い。だからサッカーでもいろんな攻撃パターンを持とう」
という言葉を同時通訳することがありました。

これをただ直訳することもできますが、それではおそらくブラジル人には響きません。
ここでの訳し方に通訳の個性・面白味が出てきます。

①直訳
単語を入れ替えるだけの訳し方。普段はこれでいいのですが、文化的背景の違いがある場面では伝わりにくかったり誤解を生んだりします。

②補足
直訳した後に、相撲のルールなどを説明してわかるようにする訳し方。「相撲は円の外に出たり倒れたら負けの日本の伝統的スポーツで〜」を補足します。監督の意図に近い訳し方ができますが、同時通訳だと時間がなくて、全体に向けて話している監督の話は先に進んでしまったりします。

③要約
相撲の部分はあえて訳さず、監督の伝えたいもの、"色んな攻撃パターンを持とう"の部分だけ伝える訳し方。いちばん伝えたいものを強く伝えられますが、言葉の深みは伝わりにくくなるかも知れません。

④意訳
実際に監督が例えた相撲ではなく、ブラジルでサッカーの次に人気があって伝わりやすいバレーボールで例えたりする訳し方。言葉というより伝えたい意図を訳す方法。わかりやすく、意図も変えず、良い訳し方なのですが、同時通訳だと何で例えを出そうか考える時間が短く、難易度は少し高めです。

実際に通訳をすると上記以外のパターンや、上記のパターンを組み合わせたハイブリッド型の通訳方法をする方もいます。
僕はここに芸術を感じていて、とても楽しいです(笑)。

他にも、日本人がよく使う「頑張れ」という言葉を外国人に直訳すると、外国人にとっては文化的背景から、同じ単語でも違った印象で捉えたりします。

日本人だと「(成功して欲しいので)頑張れ」としていったつもりが、ブラジル人だと「(あなたは努力不足の怠け者だから)頑張れ」といわれていると捉えてしまったりします。

なのでただ直訳するだけでなく、そういった背景の部分を説明して補足したり、「応援しています」と訳したり、工夫があった方がいいのかなというのが個人的な意見です。

時折、映画やアニメの翻訳で「この翻訳違う!!」という指摘をされている状況を見ますが、大抵の場合、直訳ではないことを指摘している場合が多く、僕にとっては「この訳し方スゲェー」と、芸術作品に見えています(笑)

【通訳・文化的配慮】
言葉がわかるだけではいけない部分もあります。
これはかなり難しいことなのですが、例えば日本とブラジルだと学校制度や習慣なども含め文化が違います。

ブラジルのサッカークラブだと子どもの年代からサポートが厚く、子どもでも給料があったり、クラブレストランがあってそこで3食摂ったり、クラブ側が練習で使う用具をそろえるのが普通だったりします。

日系人の子が言葉だけ日本語を話せても、もしくは言葉だけうまい通訳がいても、いざ日本に来たときには、最初クラブが練習用具そろえてなくて忘れ物をしてしまうかもしれません。

逆に給食制度のない国から来た子がいたら、日本の学校に転校初日はお弁当を持参するかもしれません。

そのときに通訳が言葉だけ訳していると、事前に気を使ってひと言かけるなどの気遣いができませんし、その子は悪気もないのにしかられ、つらい思いをするかもしれません。

最初に子どもに注意点を伝えておくとか、先生に事情を説明して配慮してもらう、などができません。

ただしこれは間に入る通訳にとっても大変なことで、言葉はある程度他国にいても勉強できますし、ハーフの子なら親の影響で生まれつきバイリンガルなんてこともありますが、体は1つしかないので、同時に複数国の学校やサッカークラブに所属したりできませんから、両国の文化と制度を完璧に把握するのはかなり難しいです。

例えば僕は大人になってからサッカーでブラジルに来たので、サッカークラブだけなら日本もブラジルも事情を把握していますが、ブラジルの学校制度は人から聞いているだけで通ったことはありませんし、日本で飲食店のバイトをしたことはありますが、ブラジルで飲食店のバイトをしたことはありません。
もし今日飲食店の通訳を任された場合、できる配慮は現時点では限定的になってしまいます。

【通訳・訳すのが難しかったもの】
①俳句など言葉に特殊なルールがあるもの
5・7・5の美しさを伝えようにも、字数を合わすのが難しい。
例えば“冬”は1文字2音ですが、ポルトガル語だと"inverno"(インベルノ)と、7文字5音。

また、韻を踏んだラップや、似た音の言葉を2回以上使うからこそ面白いダジャレなど、ポルトガル語ではその2つの単語では韻を踏まない単語などもあって大変です。
直訳はできますが、似た音が繰り返すからこそ表現されていた面白味はなくなってしまいます。
そもそも文化的に似た音が繰り返すことを、面白いとは感じない国もあるかもしれませんね。

②一発芸大会
よく日本人が歓迎の意味で日本の流行りの一発芸を見せてくれたりして、とてもありがたいのですが、中には同時通訳が非常に難しいものがあります。

「ダンソン♩フィーザキー♩・・ニブラ!」はもう訳さずそのままいいました。ただリピートしてるだけです。

アルゼンチン人に「ラッスンゴレライって何ですの?」って聞かれたことがありますが、代わりにちょっとそこの読者のお兄さん説明してね。

③アニメの名言
ガンダムの「アムロ、行きまーす」というのを知っていますか?
ガンダムの主人公、アムロがガンダムに乗って敵との戦いに出撃するときにいつもいうセリフです。
これを選手名にかけて、例えば僕なら、「りょうた、行きまーす」と応用して使う日本人の方が結構います。

「○○、行きまーす」は直訳するなら全然難しい単語ではないのですが、ガンダムを知っていないとその面白味は伝わらないですよね。
これをガンダム知らない外国人にも面白味を消さずに訳すにはどうすればいいのか、同時通訳だと1秒とかで考えないといけないので難しかったです。

P.S.
コリンチャンスはフラメンゴ相手に4-0大勝。
その後も調子を落とさず現在2位となっています。

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試合の様子。ボールが奪えない相手にオーレオーレの大合唱からのゴール。
南米らしいです。
http://youtu.be/bAElW8uqiIE

僕の5月までの元所属のFC琉球は7月31日(日)17:00キックオフでセレッソ大阪U23と対戦しました。1万人祭りという、J3の試合とは思えない破格の雰囲気での大イベントでした。

詳細はこちら

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名古屋グランパスも苦しい時期が続いていますが、地球の反対側から応援しています。絶対残留!

その他、リオオリンピック情報や南米サッカー情報、Jリーグ情報、質問などはTwitterアカウントまでどうぞ!
@HenzanRyota

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