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宇治 誠
イングランド

イングランド通信
~イングランドサッカーの育成状況とEPPP~
(現状と変化と今後)

宇治 誠
1984年12月13日生まれ。大阪府出身。
富山大学教育学部生涯スポーツ科卒業後、2008年に渡英。Liverpool John Moores UniversityにてScience & Footballを学び、現在同大学でスポーツ科学の博士課程を専攻している。コーチとしてLeague Two(イングランド4部リーグ)のTranmere FCアカデミーコーチとユースチームのマッチアナリストとして働き、同時にLiverpool FCサッカースクールコーチもこなしている。UEFA Bコーチングライセンス所持。

イングランド

■イングランドサッカー界でのKPI(Key Performance Indicators)

2015.11.05

みなさん、お久しぶりです。

2015-16シーズンが始まり、ほぼ2カ月が過ぎようとしています。今シーズンも前年度同様、Tranmere FCユースチーム(U18)の戦術分析担当に加えて、アカデミーコーチとして働いていきます。アカデミーでは、U16コーチを担当することになりました。ユースチームに昇格させる選手の決定、また昇格できなかった選手の放出という新たな責任を伴った仕事をこなしていかなければなりません。

加えて、今季からファーストチームのホームゲーム時の戦術分析にも関わっていきます。今後もこれまで経験してこなかったことにチャレンジしていこうと思います。

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写真.ファーストチームのホームゲーム時のマッチアナリストとしての仕事風景
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図1.Self-Assessmentの10項目

では、今回は前回述べたSelf-Assessmentの10項目の中の3.コーチングと7.Player Development&Progressionの項目に着目して話していこうと思います。特に、アカデミーコーチとして、Tranmere FCアカデミープログラムに則った練習メニューを実施し、その中で選手がどのように成長し、変化していくのかを継続的に評価していく必要があります。例えるならば、学校教育に指導要領が存在し、その指導要領に則って授業を行い、生徒それぞれの学習過程を評価判断していくことに近いと思います。
Tranmereではアカデミーのフィロソフィー、またプレーモデルとして、試合の状況を大きく6つに分けて考えています。

1. Playing Out from Back
2. Build Up Play
3. Attacking Play
4. Pressing Strategy
5. Defending Principles
6. Transition

試合中に上記の6つの状況下で、チームとして各々の選手が自分の役割を把握し、それを実行することができるようにトレーニングを計画する必要があります。そのため、1週間のトレーニングは一つのトピック毎に集中し、6週間のサイクルで6つの項目を補います。また、選手の理解度と試合中での実行力を、戦術分析の観点から判断、評価していきます。

最近、イングランドサッカー界では、ビジネス用語であるKPI(Key Performance Indicators)という言葉をよく耳にします。Tranmere FCではユースチームからアカデミーの各年代チームまで上記の6項目に関したKPIを構築し、その指標を基に選手の理解度と実践力を判断しています(年代によって、少しKPIの内容が変化する)。

例えばPlaying Out from Backの項目に、GKがゴールキックをセットしたとき、他の10人の選手のポジショニングや相手選手との位置関係があります。この場合、各々の選手が自分の役割を理解し、チームとしてのシェイプが構築できていれば、この項目に対してプラス評価が付きます。反対に、できていなければ、チームとしてまたは個人としてマイナス評価が付きます。1試合を通して、選手の理解度と実行力を数値化していきます。数値が良ければ、理解力があり、体現できているということになり、もし数値が悪ければ、その分野を伸ばさなければならないという指標になります。そのためにトレーニングも、6項目、またKPIに則って進める必要があります。

私たちは、クラブとして注目する6つの状況下で、クラブのプレーモデルを試合中に体現できる選手を総合的(戦術的、技術的、身体的、また心理的)に育てていくことを目指しています。そのために、ゲーム中の大事な要素の明確化(KPIなど)、試合でその大事な要素を実現するための練習の計画と実行を行う必要があります。

学校教育の中でテストが学習過程の指標になるように、自分たちが目指すプレースタイルを明確にし、それを試合中に実現するために練習を計画、実施する。そのために1週間を費やして1つのトピックを練習し、その週の試合でそのトピックの理解度を確認する。次の週は他のトピックを練習して、6週間ですべての項目を補う。シーズン中に6つの項目を繰り返すことで再確認とその精度を高めていくことを目指していきます。

加えて、選手の成長や変化を客観的に数値で確認する。アカデミーコーチとして、EPPP施行後この練習と試合の関係性の明確化と評価基準の明確化に賛同しています。クラブが目指すスタイルを明確にし、そのための練習を計画する。また、試合中に練習したことを体現できているか評価する。当たり前のようで、実行することは難しいのかもしれません。しかし、実行することができれば論理的で計画性があり、長期的な視野を持った選手育成に効果的かもしれません。

次回は、選手への評価基準のフィードバックとクラブとしてどのようにデータを管理していくかを話していこうと思います。

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