GAKKEN SPORTS BOOKS 最新版サッカールールブック
最新版
サッカールールブック
監修: 高田静夫
著: 三村高之
とっつきにくいサッカールールの内容を、日本人が理解しやすいようにジャンル分けして構成。判定の難しいケースもイラストを多く使って、簡単にわかるように解説。「日本でいちばんわかりやすいルールブック」の最新版。何かあったときに簡単に調べられる。
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ホルヘ・三村

南米通信 ~ラ・ビダ・デ・ホルヘ~

ホルヘ・三村
1960年10月23日生まれ。東京都出身。元々の南米サッカー好きが、89年のコパ・アメリカ取材を契機に沸騰。91年、気がつけば職を捨て、単身エクアドルに立っていた。現在はアルゼンチンのブエノスアイレスを拠点に、コパ・リベルタドーレス、コパ・アメリカ、ワールドカップ南米予選や各国リーグを取材している。そのかたわら、酒を中心とした南米各国のナイトライフにも造詣が深い。というよりそれに溺れ、酒とサッカーの日々を送っている。

アルゼンチン

■ビデオ判定

2018.03.14

 毎年恒例となった1カ月間の禁酒を今年も行い、ひな祭りの日に無事解禁を迎えた。たしか35歳のときだったと思うが、初めて受けた健康診断で肝機能のγ―GPTの数値が高かった。これはアルコールの摂取過多が原因の場合が多い。そこで、しばらく酒を抜いて再検査することになった。再検査では平常値となり、それで安心して毎晩呑んだくれる日々がはじまった。翌年の検査でも引っかかり、また酒を抜いて再検査ということ繰り返してきたのだ。誰からともなく、この恒例行事はラマダンと呼ばれるようになった。呑み仲間たちは、「ラマダンいつから?」とか「ラマダン開けたら一杯やろう」というふうに使っていた。しかし、フランスでイスラム教を風刺した週刊誌編集部がテロリストに襲撃されたことを機に、ホルヘ自らはこの言葉を使うのをやめた。

 テロは許されないことだが、イスラム教への風刺がなければこのような惨劇は起こらなかった。風刺が是か非か、言論、報道、表現の自由という問題にはさまざまな意見があるだろう。しかし、このラマダンは風刺でもなんでもない。単に、イスラム教の断食月であるラマダンを禁酒月にかけた言葉遊びにすぎない。我々としては何の意図もないのだが、イスラム教の人の立場になったらどうだろうと考えた。そもそも彼らは戒律によって酒をたしなまない。ラマダンとは、イスラム教の重要な行事の一つ。呑んだくれが自業自得で肝臓を悪くして禁酒する行為と聖なる断食を一緒にしていると知ったら、侮辱と感じ、怒り、悲しむだろう。先ごろ漫画でチンギス・ハンの顔に落書きをしたことがモンゴル人を怒らせたが、あれも同じことだ。まるで悪気はないのだが、相手がどのように感じるかを考慮していなかった。意図せぬこととはいえ、他人を傷つけたり恨まれることは望まない。というわけで、ホルヘのラマダンは自粛となったのだ。そこで、「何か他のネーミングはないかな?」と周囲に問うたところ、「前園っていうのはどうだ」という意見があった。断酒=前園ということだが、即座に却下した。

 当初はγ―GTPだけだった異常値だが、歳とともに中性脂肪、コレステロール、尿酸値、血糖なども平常値を越えるようになってきた。ところが今回の検査では、γ―GTPと中性脂肪以外は平常値。数値オーバーだった二つも、ラインをわずかに超えただけ。禁酒の必要などないほどだった。このようなことは珍しい。医療機械の進歩により、以前は見つからなかった病気や異常が明らかになっていくのが最近の傾向だ。以前、少年サッカーの指導をしていたころ、子どもたちの骨折が数倍に増えたという話を聞いた。「近ごろの子どもは骨が弱くなったせいかな」と思ったが、実はレントゲンの進歩によるものだった。古い機械では写らない小さなヒビまで見つけられるようになったため、「捻挫ですね」だったものが、「骨にヒビが入っている。骨折です」ということになったのだ。

 大昔の医師の診察は問診と触診だけだった。それがさまざまな検査方法や医療機械の出現により、医学界は革新的に進歩した。その点、サッカー界はどうだろうか。審判員を医師とすると、いまだに基本は人力頼り。当然ミスが多く、それが騒動のもとになったりする。その一方で、「サッカーは人がやるもの。選手のミスも審判のミスもサッカーの一部。それがあるから面白い」という考え方もある。ホルヘもこの一派だ。だからといって、ミスばかりではどうしようもない。基本は正確なジャッジで、ミスはごくたまにでなければ困る。審判員にとって大切な能力は動体視力だと思う。瞬間的な反則やワンタッチの有無を見極めるのは優れた動体視力。最近のことは知らないが、少なくとも過去においては、審判員の育成や昇格においてそれが無視されていた。瞬発力や持久力のテストはあるものの、動体視力のテストは行われていなかった。ミスジャッジを減らすためには、審判員にここを強化させるべきだと思う。

 審判システムの改革として、ゴールライン上に位置する追加副審の起用がある。目の数を増やすことで見逃しを防ごうというわけだ。しかしカメラマンの立場からすると、あれは邪魔以外の何物でもない。彼らはプレーに合わせてライン上を移動しているので、肝心なところで目の前に来てシャッターチャンスを台無しにされてしまうことが多々あった。大きな試合ではカメラマンの席が指定されるので、追加副審のサイドに座らされたら最悪なのだ。

 したがってホルヘは、どうしてもというのだったら、追加副審よりビデオ判定を支持する。これはスロー再生のビデオで見直すので、撮影さえされていれば見間違うことはない。ところが、これも万全ではないのだ。医師が何かを疑い、「MRIで検査しましょう」といえば異常の発見につながるが、疑いを持たずに検査しなければ何も見つからない。昨年のコパ・リベルタドーレスにビデオ判定が試験導入された。準決勝のリーベル対ラヌースは、第1試合でホームのリーベルが1-0で先勝。続く第2戦ではリーベルが2点を先制しトータル3-0となった。アウェイゴール制度もあり、これでリーベルの決勝進出はほぼ確定。その後、ラヌースのDFがワンプレーでハンドとトリッピングをするが、主審はPKを取らず、ビデオ判定にも持ち込まなかった。「すでに勝負は決している。このうえ死者に鞭打つようなPKとすれば、ホームのサポーターが暴動を起こす可能性が高い」という判断があったと想像できる。試合はその後ラヌースが3点を挙げ、奇跡の大逆転まであと1点に迫った。そしてラヌースの選手が相手ペナルティーエリア内で倒された。主審はゴールキックとジャッジするも、ラヌースの抗議と副審のアドバイスを受けビデオ判定を行った。その結果PKとなり、ラヌースが決勝へ勝ち上がった。あのときビデオ判定にしてリーベルがPKを決めていれば、こんな結果にはならなかった。とまあ、ビデオ判定もパーフェクトではないのだ。

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