GAKKEN SPORTS BOOKS 最新版サッカールールブック
最新版
サッカールールブック
監修: 高田静夫
著: 三村高之
とっつきにくいサッカールールの内容を、日本人が理解しやすいようにジャンル分けして構成。判定の難しいケースもイラストを多く使って、簡単にわかるように解説。「日本でいちばんわかりやすいルールブック」の最新版。何かあったときに簡単に調べられる。
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ホルヘ・三村

南米通信 ~ラ・ビダ・デ・ホルヘ~

ホルヘ・三村
1960年10月23日生まれ。東京都出身。元々の南米サッカー好きが、89年のコパ・アメリカ取材を契機に沸騰。91年、気がつけば職を捨て、単身エクアドルに立っていた。現在はアルゼンチンのブエノスアイレスを拠点に、コパ・リベルタドーレス、コパ・アメリカ、ワールドカップ南米予選や各国リーグを取材している。そのかたわら、酒を中心とした南米各国のナイトライフにも造詣が深い。というよりそれに溺れ、酒とサッカーの日々を送っている。

アルゼンチン

■ミイラの役割

2018.02.13

上野の国立科学博物館で、「古代アンデス文明展」というのをやっていたので行ってきた。南米のアンデス地方というと、インカ帝国やインカ文明が有名だが、それはアンデス文明の集大成。南米大陸の太平洋側(左側)に6000メートル級の山々が連なるアンデス山脈。ここは大昔に海底が隆起したもので、それ以前は大西洋側よりこちらのほうが低く、アマゾン河も太平洋に流れ込んでいたそうだ。山脈の麓にあたる海岸線は乾燥地帯で、場所によっては砂漠となっている。ペルーの首都リマ、チリの首都サンティアゴも同様で雨は非常に少ない。一方山岳地帯は、気温の変化が激しく天気も変わりやすい。エクアドルの首都キトやコロンビアの首都ボゴタはこのような気候だ。

古代文明は紀元前3000年以上前に生まれたそうだが、それは地域ごとのもの。海辺の文明と山岳部のものは独自に発展していった。やがてそれらが交流するようになって地域限定だった文明が他地域に広がり、さらには侵略などで文明が吸収合併されていく。その最終形がインカ文明なのだ。「古代アンデス文明展」では、プレ・インカからインカまでの文明を説明し、土器や金製品、織物などの出土品が展示されていた。展示品の目玉は、なんといってもミイラ。砂漠地帯ではもともと死体は腐らずミイラになったそうだ。それがインカ時代には、生まれ変わり信仰や神への生贄(いけにえ)という意味を持つようになったという。

ホルヘも何度かアンデス地方を訪れたが、基本的に遺跡とかには興味がなかった。しかし2004年のコパ・アメリカがペルーで開催されたとき、「ペルー案内」といった企画の取材で、いくつかの遺跡に足を運んだ。砂漠に砂で築いたお城が今でもしっかり残っているのを見ると、「大昔に、よくぞこんなものを造ったものだ」と感心し、山の上の湧水を街へ流すため大規模な用水路を造り、それが現在の生活でも使われているのを見て驚いたものだ。しかしなんといっても、最も感動し驚嘆したのはマチュピチュ。山頂になぜ、どうやってあのような街を造ったのか。そのミステリアスさにも惹かれたが、なにやら神々しさすら感じられた。

アンデス山脈が走る国々には高地の街がある。代表格は標高3600メートルに位置するボリビアの首都ラパス。富士山と同じくらいの高さなのだ。初めてここに行ったときは、さすがに高山病になった。空気が薄いのに、盆地なのでやたらと坂が多い。ちょっと歩くだけで息切れの連続。そして激しい頭痛にも悩まされた。そんなホルヘを心配した地元の人が、「コカ茶を飲め」と勧めてくれた。これはコカという樹の葉っぱのお茶だ。ペルーやボリビアではコカの葉は生活に溶け込んでおり、お茶はもちろんのこと、そのエキスを使った傷薬の軟膏や歯磨きなどにもある。滋養強壮効果があるとされ、インカ時代の飛脚はこれによって疲れを知らず走っていたそうだ。ホルヘは勧められるままにコカ茶をガブガブ飲み、さらには葉っぱまで食った。辛い症状は数日で収まったが、それがコカのおかげかどうかはわからない。

大陸間プレーオフでニュージーランドを下し、1982年のスペイン大会以来36年振りにワールドカップの出場権を得たペルー。しかし、キャプテンにしてエースストライカーのゲレロがFIFAから1年半の出場停止処分を受け、このままではロシアの舞台に立つことはできない。南米予選第17節のアルゼンチン戦のドーピング検査で、彼の尿からコカインの陽性反応が出たのだ。ゲレロはコカインの使用を否定し、コカ茶のせいだと弁明した。コカの葉は、コカインの原料。1998年アメリカワールドカップ予選で、ボリビアとのアウェイ戦に臨んだブラジル代表GKタファレルもコカイン陽性となったが、その後、コカ茶のせいということで無罪放免となっている。

当時の検査方法より現在のものは進化しているはずで、コカインとコカ茶の区別はつきそうなものだ。コカ茶でいちいち反応していたら、ペルーリーグやボリビアリーグのドーピング検査は陽性だらけになってしまうだろう。しかし、ゲレロはあくまでも無実を主張。そして、閉ざされたロシアへの道を再び開くため、スポーツ仲裁裁判所へ提訴した。彼の弁護士によると、切り札となる証人がいるという。その証人とは、なんとインカ時代のミイラ。彼らはコカの葉を常用していたが、その時代にコカインはない。ミイラの髪の毛からドーピング検査でコカイン陽性となる物質が見つかれば検査の不正確さが証明され、ゲレロの疑いは晴れるのだという。

36年振りのワールドカップ出場にゲレロが果たした役割は大きい。世界的にはあまり知られていないが、ワールドクラスのストライカーだとホルヘは思っている。その彼のプレーを日本のサッカーファンにぜひ見てもらいたいので、実際に黒か白かは別として、今回の裁判ではミイラにがんばってもらいたいと思っている。

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