GAKKEN SPORTS BOOKS 最新版サッカールールブック
最新版
サッカールールブック
監修: 高田静夫
著: 三村高之
とっつきにくいサッカールールの内容を、日本人が理解しやすいようにジャンル分けして構成。判定の難しいケースもイラストを多く使って、簡単にわかるように解説。「日本でいちばんわかりやすいルールブック」の最新版。何かあったときに簡単に調べられる。
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ホルヘ・三村

南米通信 ~ラ・ビダ・デ・ホルヘ~

ホルヘ・三村
1960年10月23日生まれ。東京都出身。元々の南米サッカー好きが、89年のコパ・アメリカ取材を契機に沸騰。91年、気がつけば職を捨て、単身エクアドルに立っていた。現在はアルゼンチンのブエノスアイレスを拠点に、コパ・リベルタドーレス、コパ・アメリカ、ワールドカップ南米予選や各国リーグを取材している。そのかたわら、酒を中心とした南米各国のナイトライフにも造詣が深い。というよりそれに溺れ、酒とサッカーの日々を送っている。

アルゼンチン

■日本人コーチ

2017.01.25

 以前にも何度か紹介した、アルゼンチンで指導者の修行をしている飯沼直樹君が、昨年10月にラヌースのスクール部門の正式なコーチとして採用された。これは極めて珍しいことだ。海外で指導者の勉強をした者の中には、「〇〇クラブでコーチをした」という例は少なくない。こうしたケースのほとんどは、お願いして勉強させてもらうので無給が当然。場合によっては、お金を払うことすらある。また、ある程度ちゃんとした国では労働ビザの規律が徹底している。そして、それなりのクラブならこれを遵守する。つまり、違法就労はさせないのだ。一生懸命働けばお小遣い程度はくれるかもしれないが、正式採用ということにはならない。ところが飯沼君は、契約をして正式なコーチになったのだ。

 彼は2013年にアルゼンチンへ来て、まずはつてを頼りに、リーベルの元GKが開いているキーパースクールにアシスタントとして入れてもらった。もちろん、無給だ。翌年からは働きぶりが認められ、報酬を得られるようになった。ここは個人スクールなので、ビザの有無についてうるさいことはいわない。しかし、金額は僅かなものだ。その後、このスクールを続けながら1部リーグ所属ラヌースの小学生部門にアシスタントとして加わることが許された。ここでも当然、給料はもらえない。これを2年間続け、日本に短期間帰ってはきつい仕事で金を貯めてアルゼンチンに来ることを繰り返していた。

 そして昨年、ラヌースと密接な関係のあるバビーフットボールクラブのコーチにもなった。ラヌースの小学生チームは全員がセレクションで選ばれた子どもたちで、将来のプロ選手候補。彼らはラヌースで11人制サッカーを行い、このクラブでバビーフットボールもプレーしている。飯沼君にとっては、同じ子どもを別の場所で指導するということだ。そして、ここでは給料が支払われた。ちゃんとしたクラブであるラヌースとしては、労働ビザを持たない人間にお金は払えない。そこで彼の努力と仕事ぶりに報いるため、このクラブのコーチにしてそこから支払う形をとったようだ。そしてついに昨年9月、スクール部門の正式なコーチにならないかとのオファーがあった。

 9月いっぱいでアルゼンチンでの修行を終える予定だったので悩んだが、結局オファーを受け入れた。こうなると、1部リーグ所属のクラブだけに動きは速い。外国人選手のビザを担当する担当者がおり、飯沼君の手続きもスムーズに行われた。クラブからブエノスアイレス市内の役所までハイヤーに乗せられて行き、普通は長蛇の列のところを、顔パスでチャチャっと済ませて手続き完了。少年部の役員がクラブ近くに所有するワンルームも格安で借りられることとなった。

 スクールには小学1年生から中学生までの600人近くが通っている。小学低学年の中には、ここで才能を認められて育成部門のチームに引っ張られるケースもたまにあるが、基本的にここに来るのはサッカーを楽しもうという子どもたち。アルゼンチンには、日本のような少年団やクラブ活動がほとんどない。バビーフットボールを行う場所は豊富ながら、11人制サッカーとなるとそうはいかない。コーチが指導してくれて、練習環境が整い、週末に試合が組まれるといったちゃんとした組織は稀なのだ。つまりスクールは、育成部のようにプロ予備軍を育てるのではなく、クラブ活動的なものなのだ。

 飯沼君は担当のチームを割り当てられ、アシスタントではなく一人前のコーチとして扱われている。スクールは育成部より格下という感じはあるものの、下部リーグながらトップチームの監督経験者などもここで指導している。ラヌースはリーグ優勝2回、南米の国際大会優勝2回という中堅クラブ。しかし経営が安定しており、その要因でもある育成組織の充実ぶりには定評がある。したがって、ここで働ければ指導者としての箔(はく)がつく。そこに、現地のコーチングライセンスも持っていない飯沼君がなぜ呼ばれたのだろうか。

 ラヌースは新たな場所にスクールを開くこととなり、人手が必要となった。そこで、いちばん身近にいた彼にまず声をかけたのだそうだ。飯沼君自身、このオファーは青天の霹靂で、「なぜ自分に」とスタッフに質問したところ、「いちばん身近」という答えが返ってきたという。しかしそれでも納得できず、さらに突っ込んで聞くと、「お前は教えすぎないのがいいからだ」と言われたそうだ。ラヌースの指導を見ていると、日本だったら父母から「もっとちゃんと教えてくれ」と抗議がくると思うほど、コーチは子どもに介入しない。ポイントだけを抑え、そのほかは子どもたちに任せるスタイルだ。最近は日本でも、「オーバーコーチングはするな。選手自身に考えさせろ」という動きになっているが、黙って見守るのは意外に難しい。わかりやすく教えてしまうのが人情なのだ。「教えすぎないことを」買われた飯沼君だが、本人が白状するには、言葉の問題で細かく指導することができないのだそうだ。自分では欠点だと認識している点を評価されたことで、複雑な心境だったという。

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