GAKKEN SPORTS BOOKS 最新版サッカールールブック
最新版
サッカールールブック
監修: 高田静夫
著: 三村高之
とっつきにくいサッカールールの内容を、日本人が理解しやすいようにジャンル分けして構成。判定の難しいケースもイラストを多く使って、簡単にわかるように解説。「日本でいちばんわかりやすいルールブック」の最新版。何かあったときに簡単に調べられる。
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ホルヘ・三村

南米通信 ~ラ・ビダ・デ・ホルヘ~

ホルヘ・三村
1960年10月23日生まれ。東京都出身。元々の南米サッカー好きが、89年のコパ・アメリカ取材を契機に沸騰。91年、気がつけば職を捨て、単身エクアドルに立っていた。現在はアルゼンチンのブエノスアイレスを拠点に、コパ・リベルタドーレス、コパ・アメリカ、ワールドカップ南米予選や各国リーグを取材している。そのかたわら、酒を中心とした南米各国のナイトライフにも造詣が深い。というよりそれに溺れ、酒とサッカーの日々を送っている。

アルゼンチン

■PKなんて

2016.02.18

 春一番が吹いたバレンタインデーに、ホルヘは今年初めてプレーに臨んだ。杉並リーグに参戦している我がスーパーミラーズだが、初戦と第2戦は人数不足で棄権負けとなっている。そして、14日が第3戦だった。痛風明けのホルヘは、結局、トレーニングなしで本番に挑むことになった。恐る恐るという感じでのプレーだったが、思いの外動けた。もっとも、「動けた」からといって「出来がよかった」わけではない。ボールに触るのも数カ月ぶりなので、当然のことながらミスを連発。しかし、仲間ががんばってくれて試合はワンサイド。そんな中、味方がペナルティーエリア内で倒されてPKを得た。倒された選手は、この試合まだ無得点。自ら獲得したチャンスを彼が決めればいいのだが、なんと、ホルヘに譲ってきた。ありがた迷惑である。ホルヘはPKが大嫌いなのだ。“緊張しい”なので、プレッシャーでガチガチになってしまう。そこで、「いやいや、おまえが倒されたんだから、お前が蹴れよ」と返したが、他の選手も最年長のホルヘに点を取らせようと、PKを蹴るように勧めてくる。民主主義の世の中である。多勢に無勢でやるはめになった。みんなの気持ちはありがたいが、これがプレッシャーになるのだ。あー、嫌だ。

 PK嫌いとはいえ、中高生のころはそれなりに練習をしていた。いろいろな方法を試した末、もっとも自分に合っているなと思ったのは、元オランダ代表のヨハン・ニースケンスのスタイルだった。彼はクライフの弟分で、2人のヨハンがそろったオランダは、1974年ワールドカップで準優勝になっている。ニースケンスのPKは、助走でS字を描き、あとはインステップでドカン。コースより、強さで勝負する。繊細にコースを狙うより、このほうがプレッシャーの影響は少ない。5年ほど前、やはりスーパーミラーズの試合でやむなくPKを蹴ることになった。迷うことなくニースケンス方式で挑んだが、キックの瞬間に足首がそっくり返ってしまい、チョップキックのような力のないボールがゴール中央へ行ってしまった。しかしGKがヤマを張って飛んでいたので、結果オーライ。はたから見れば狙って蹴ったと思うかもしれないが、大失敗であったことは本人がいちばんわかっている。これによって自信を喪失し、唯一のよりどころだったニースケンス方式もできなくなった。それなのに、またPKを蹴れという。あー、嫌だ。

 ここ数年、インステップキックができなくなった。明確な因果関係は不明ながら、骨盤矯正をしてからミートの確率が激減。したがって最近は、インサイドとトーキックしか使っていない。トーキックでPKを蹴って失敗すると、ド素人丸出しで格好悪い。となると、残された選択肢はインサイドキックだけ。しかし痛風後のヒザだし筋力もすっかり落ちているので、強いボールは蹴れそうにない。コロコロPKの遠藤は、キックの寸前までGKを見ているという。「PKのときは、ボールなんか見るな。GKを見ろ」という指導者もいる。ホルヘも練習でそれを試したことはあるが、助走からずっとボールを見ていないと、不安でちゃんと蹴れない。だから、GKの動きを見て逆を突く、というのは不可能だ。したがって、駆け引きなしの一発勝負で決めなければならない。そこで、狙いをGKが防ぎにくいゴール上の角にした。その角は、向かって右。球速がないので、コースが命。ホルヘのインサイドキックは若干カーブがかかるので、それも計算して慎重に狙いどころを定める。枠を外れても構わない。失敗したら、「俺に蹴らせた、お前らのせいだ」と開き直ることにした。

 開き直ったおかげで、顔に笑みが浮かぶほどリラックスしている。結果を考えず、ボールとコースだけに集中して助走開始。そして、軸足の左足をボールの横に踏み込む。狙いが上なので、上体は被せずに起こし気味。この上体起こしの効果なのか、ボールを凝視していたにもかかわらず、GKが向かって右に動くのが視界の隅に映った。その瞬間、脳からピーンと信号が届き、インサイドが閉じられて、シュートは当初の狙いとは逆の左下へ向かって行った。GKの逆を突いた、見事なゴール。ハハハ、簡単じゃん、PKなんて。

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