GAKKEN SPORTS BOOKS 最新版サッカールールブック
最新版
サッカールールブック
監修: 高田静夫
著: 三村高之
とっつきにくいサッカールールの内容を、日本人が理解しやすいようにジャンル分けして構成。判定の難しいケースもイラストを多く使って、簡単にわかるように解説。「日本でいちばんわかりやすいルールブック」の最新版。何かあったときに簡単に調べられる。
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ホルヘ・三村

南米通信 ~ラ・ビダ・デ・ホルヘ~

ホルヘ・三村
1960年10月23日生まれ。東京都出身。元々の南米サッカー好きが、89年のコパ・アメリカ取材を契機に沸騰。91年、気がつけば職を捨て、単身エクアドルに立っていた。現在はアルゼンチンのブエノスアイレスを拠点に、コパ・リベルタドーレス、コパ・アメリカ、ワールドカップ南米予選や各国リーグを取材している。そのかたわら、酒を中心とした南米各国のナイトライフにも造詣が深い。というよりそれに溺れ、酒とサッカーの日々を送っている。

アルゼンチン

■審判受難

2016.02.09

 久しぶりに筋肉痛になった。スポーツでしっかり体を動かしての筋肉痛なら格好もつくが、審判をやってのことだから情けない。昨年は、アルゼンチンでボールを蹴ったのは数えるほど。1月下旬から杉並リーグが開幕なので、それに備えて正月明けよりトレーニングを始めるつもりだった。しかしそれが、2日深夜に発症したヒザの痛風のため頓挫してしまった。審判のオファーがあったのは、約2週間前。その時点ではまだ走れる状態ではなかったが、2週間あれば回復すると思い引き受けた。ところが、なかなか治らない。治療を受けた整形外科は、初期の段階では消炎鎮痛剤を、痛みが引いてからは、再発防止のために尿酸を下げる薬を処方してくれただけ。電気や超音波を当てたり、マッサージをするというような治療は一切行わない。自然治癒に任せるといった感じだ。本番の4日前に軽く走ってみたが、とても審判が務まるとは思えない。主審でなく副審なのだが、ダッシュ回数は副審のほうが多い。このヒザでは、もたないかもしれない。

 そこで翌日、知り合いの整骨院へ行った。「痛風だけど、治せる?」と聞くと、「痛風は無理だ」との答え。痛風は関節に溜まった尿酸の結晶が悪さをしているので、その原因がなくならなければ完治しないという。それでも、「少しはヒザの機能を回復させることはできるだろう」と、引き受けてくれた。ヒザの状態を診て、「審判はやらないほうがいい」といいつつも、丁寧に治療してくれた。その日はむしろ痛みが増したものの翌日から良化し、ずっとまとわりついていた違和感がすっきりした。過去にも書いたが、東京の三鷹台にある高井戸接骨院の森先生は、なかなかの名医なのだ。ホルヘが行ったときも、フットサルの東京チャンピオンの選手が治療に来ていた。

 痛風発症後最高の状態に仕上がったとはいえ、まだ完治はしていない。さらに、この数カ月間、本気で走ったことがない。試合のレベルはかなり高く、元U-17代表だか候補だったのとか、元FC東京ユースだとかがいる。当然、みんな速い。しかし、これで吹っ切れた。ホルヘが全力で走っても、どうせ追いつかないのだ。それならば、全力を出すことはない。ということで、8~9割のスピードでお茶を濁した。そのせいばかりではないだろうが、オフサイド絡みで2度誤審をしてしまった。取るべきところを取らず、流すべきケースで旗を上げてしまったのだ。幸いにも抗議などなかったが、審判をやっていればこういうことはよくある。バスケットボール女子リーグのシャンソンが、誤審をした審判を損害賠償金3千万円で裁判所に訴えたが、誤審のたびに訴えられたら審判はたまったものではない。スポーツ界の慣習として、重大な誤審があった場合、まず協会やリーグ主催者に提訴し、それが認められない場合はスポーツ仲介裁判所に訴える。それが今回は、一般の地方裁判所に3千万という高額の賠償金を求めて訴えている。おそらく、この件を世間に注目させるための作戦なのだろうが、審判個人を訴えるのはいかがなものか。

 昨年のトルコ1部リーグでは、誤審を巡って面白い出来事があった。ガムスパシャとチャイクル・リゼスポルの試合でのこと。ホームのガムスパシャは1-0と先制したが、PKで追いつかれ引き分けた。そして、このPKが誤審だった。“疑惑”でなく“誤審”とはっきり書くのは、主審がそれを認めているから。試合後、ガムスパシャの監督がテレビのインタビューを受けていると、そこに主審がやってきて、「あれは誤審だった。あなたやガムスパシャのみなさんに謝りたい。もう(審判を)続けるべきではないだろう」とTVカメラの前で謝罪した。監督は、「辞める必要はない」と慌てて彼を引き留め、「すべての審判があなたのようならいいのに」と、主審をたたえた。ミスしたら、素直に謝ったほうがいいようだ。

 しかし昨年末のチュニジア1部リーグでは、謝る暇を与えられなかった主審が災難にあった。CAビセルティン対ASマルサの試合で、主審はスタンドから激しい非難のコールを浴びた。日本でも「おまえのかーちゃん、デベソ」という悪口はあるが、これは子どもが使うもの。大人が侮辱の言葉を吐くときは、相手のことを直接けなす。しかし英語の「サノバビッチ=サム オブ ザ ビッチ」(売春婦の子)のように、諸外国では相手の母親までを巻き込むことがある。このときのコールにも母親を侮辱する言葉が含まれており、それに耐えられなくなった主審は試合中に号泣。両チームの選手が彼をなだめ、スタンドに向かってコールをしないように要請した。こんな話を聞くたびに、審判とは割に合わない役割だと思うが、オファーがあると、つい引き受けてしまうのだ。

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