GAKKEN SPORTS BOOKS 最新版サッカールールブック
最新版
サッカールールブック
監修: 高田静夫
著: 三村高之
とっつきにくいサッカールールの内容を、日本人が理解しやすいようにジャンル分けして構成。判定の難しいケースもイラストを多く使って、簡単にわかるように解説。「日本でいちばんわかりやすいルールブック」の最新版。何かあったときに簡単に調べられる。
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ホルヘ・三村

南米通信 ~ラ・ビダ・デ・ホルヘ~

ホルヘ・三村
1960年10月23日生まれ。東京都出身。元々の南米サッカー好きが、89年のコパ・アメリカ取材を契機に沸騰。91年、気がつけば職を捨て、単身エクアドルに立っていた。現在はアルゼンチンのブエノスアイレスを拠点に、コパ・リベルタドーレス、コパ・アメリカ、ワールドカップ南米予選や各国リーグを取材している。そのかたわら、酒を中心とした南米各国のナイトライフにも造詣が深い。というよりそれに溺れ、酒とサッカーの日々を送っている。

アルゼンチン

■パシオン不足

2015.09.11

 新聞を読んでいたら、横浜FCのジュニアユースがアルゼンチンに来たことが載っていた。ホルヘ・オルテガという、アルヘンティノスやバンフィルでプレーしていたアルゼンチン人コーチが連れてきたらしい。新聞の記事はオルテガのインタビューで、日本のサッカーについて語っていた。元々は、スポーツを通して社会に貢献しようというキリスト教の活動で1993年に来日し、下部リーグのクラブに所属した。観客はお弁当持参で、まるで演劇でも鑑賞しに来たかのように思えたという。また、5-0で勝とうが0-5で負けようが、試合が終わると観客は同じように拍手する。そんな環境がバカらしくなり引退。その後は同クラブで指導に携わり98年に帰国したが、2002年に横浜FCに呼ばれて再び来日した。

 オルテガは日本の選手について、「テクニックは非常に高く、速さと正確性も兼ね備えている」と評価する。しかし、「日本には激しさとパシオンがない」と苦言を呈する。パシオンは英語のパッションと同じで辞書によれば「情熱」で、一般的には確かにそうだ。しかしこのケースでは、そう訳すとピンとこない。日本の選手だって、サッカーには情熱をもっている。したがって、この場合の意味は、「熱さ」とか「本気」、「がむしゃら」あるいは「気合」といったところだろうか。横浜FCはアルゼンチンでボカやリーベル、ラシンなどと練習試合を行った。試合前には相手選手と交流して仲良くなったが、いざキックオフとなると、アルゼンチンの選手はラフプレーもいとわずガンガン当たってくる。「友だちになったのに蹴ってきた」と横浜FCの選手は驚いたそうだが、オルテガは彼らに、「アルゼンチンの選手は、生まれたときからプロを目指している。だから絶対に負けたくないし、いつでも最高のパフォーマンスを発揮しようとするんだ」と説明したそうだ。

 彼らが滞在中に、リーベルがコパ・リベルタドーレスに優勝した。テレビ観戦をしていると、1点目が入った直後、街中にバンバンバンと激しい爆発音が響いた。これはファンが家の窓から花火を打ち上げたものだが、選手たちは「戦争が始まったのか」と本気で思ったそうだ。アルゼンチンに限らず南米やヨーロッパでは、選手だけでなくサポーターも熱い。オルテガは記者に、「想像してみてくれ。日本ではワールドカップでフェアプレー賞をとったといって喜んでいる。サッカー協会の会長は、これは誇りだ、などといっているんだ」と理解しがたい状況を説明。そんな中で育てば、パシオンがないのは当然ともいえる。しかし横浜FCの選手たちは、今回の遠征で本場のパシオンを肌で感じることができたはずだ。

 もっとも、肌で感じたからといって、それが身につくとは限らない。ホルヘは南米人のパシオンを何度も体験しているが、いまだに自分では持ち合わせていない。というか、持とうとも思わない。持ったら危険だ。草サッカーレベルの試合でも、南米人はとことん本気で容赦がない。腹が出たおっさんでもそうだ。ホルヘは楽しむつもりで参加しているのに、彼らは楽しみよりも「勝つ」ことを前面に出してくる。「勝つ」というのは、試合の勝敗だけでなく局面の展開も含めてのこと。まったく、大人げないのだ。ホルヘのサッカーと彼らのサッカーは、ゲームと闘いほどの違いがある。仮に素人のホルヘが彼らと同じようにパシオンを持ったら、きっとケガをする。だから、パシオンは持たない。

 先日ネットで、チームメイト同士のケンカを特集したビデオを観た。仲間同士が本気で殴り合うシーンを集めたものだが、場所は試合中よりも練習中が圧倒的に多かった。練習では味方同士が敵味方に分かれるので、そこでトラブルが発生するのはうなずける。練習ではケガをさせないよう、反則で止める場合は腕で押さえる、という不文律はある。しかし、マッチメークの相手がポジションを争っているライバルだったら、「ケガしてくれたらラッキー」と思ってガツンと行く輩もいる。とにかくみんな、真剣でがむしゃらなのだ。彼らのすべてが正しいとは思わないが、日本のサッカーがもう一皮むけるためには、もっと厳しさを身に着ける必要があるだろう。

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