第97回全国高校サッカー選手権大会 全試合完全レポート

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第97回全国高校サッカー選手権大会
3回戦 流通経済大柏-星稜

2019年01月03日

本田好伸(フットボールライター) 取材・文
松岡健三郎 写真

19年1月3日(木)12:05キックオフ/千葉県・フクダ電子アリーナ/観客7,829人/試合時間80分
流通経済大柏
1

1-0
0-0

0
星稜
関川郁万(前半5分)
得点者

星稜は2回戦と同様のメンバーで攻撃時は3−5−2、守備時は5−3−2となる可変システムで臨み、流通経済大柏は2回戦からDFとFWを1人ずつ入れ替えた4−4−2で臨んだ。流経大柏は5分、最初につかんだ右CKで、中央に走り込んだ⑤関川郁万が頭で合わせて先制する。いきなりビハインドを負った星稜も、中盤に厚みを持たせながら、22分に⑩岩岸宗志のエリア内のシュート、23分にクロスバーをたたいた⑨有馬大勢のミドルなど決定的な場面を作って盛り返した。しかし前半終了間際に⑩岩岸が負傷離脱したことでシステム変更を余儀なくされてしまう。流経大柏は高さのあるFWを入れてシンプルに前に集める戦い方とセットプレーで、リスクの少ない攻撃からチャンスを作って試合をコントロール。星稜も後半は3トップで戦いながら、終盤には190センチの長身FW⑱土橋柊斗を入れてパワープレーに出たが及ばず。前年度準優勝の雪辱を誓う流経大柏が、序盤に奪った1点を守り切ってベスト8進出を果たした。

“情けない内容”でも強い流経大柏
星稜の多彩な攻撃をシャットアウト

 両チームで最初のCKのチャンスだった。5分、⑪芹田悠真のストレート系のクロスが右コーナーから中央へ送られると、走り込んだ⑤関川郁万がドンピシャで合わせた。ファーサイドから動き始めて、味方のブロックを使いながらフリーになる動きは、「イメージどおり」と本人も振り返る会心の一撃だった。

 本田裕一郎監督も⑤関川も⑪芹田も、このシーンの感想を問われて「昨日は(CKが後半に)8本もあって決められなかった」と前置きした。それは、前年度の決勝でも活躍した⑤関川を中心とするゴール前のセットプレーが彼らの強みの一つであり、絶対の自信を持っているフィニッシュパターンだからだ。2回戦では前半4本、後半8本のCKを得たものの、そこからの得点はゼロ。⑪芹田には「危機感があった」。

 だからこそ、この1点は流経大柏の強さを改めて示すのに十分だった。

 それ以降、前半15分ごろまで流経大柏のペースで試合が進み、攻撃時に3−5−2で中盤に厚みを持たせたはずの星稜がラインを押し上げられない時間が続いていた。流経大柏の、ボールを失っても素早く回収に戻るプレスバックが効果を発揮して、リズムを形成していたのだ。

 しかし、星稜が20分ごろから4−4−2に移して、右サイドハーフの⑨有馬大勢が前線に入って3トップになったり、トップ下で試合をコントロールできるようになってから、流れが変わり始めた。

 星稜のシステムがジワジワと効き始め、22分にはCKの流れからエリア内の⑩岩岸宗志がフリーで打つなど決定的な場面を作った。これは流経大柏のGK①松原颯汰のビックセーブに阻まれたが、直後の23分には、中央で相手を左に外した⑨有馬の強烈なミドルがクロスバーをたたくなど、星稜が試合を一気に盛り返した。

 河﨑護監督が「次に何を出そうと思うくらいたくさんある」というセットプレーも、ショートコーナーから⑨有馬と⑧尾﨑佳洋で崩す形がハマってチャンスメーク。しかし勝負の運は、流経大柏に味方した。

 前半38分、星稜の前線のキーマンであり、精神的支柱でもある⑩岩岸が、右肩と右足の負傷によって担架で運び出されてしまったのだ。星稜は後半から、前日の劇的な勝利を呼び込んだ⑭川本虎太郎を投入して、中央の⑪西部、右の⑨有馬による3トップで活路を見出そうとしたが、これが奏功しなかった。

「インターハイではチームとして3−4−3をしていたのですが、僕はFWをあまりやったことがなくて、動き出しなどがいまいちわからない時間が続いてしまいました。今日は中盤のラインに入ってチャンスを作れていましたし、前に入ったことでピッチ全体を見られなくなっていた感覚がありました」(⑨有馬)

 星稜の攻撃の要である⑨有馬が機能せず、前半のような勢いを出せなくなったことで、流経大柏はセットプレーや、前線でゲームを動かして得点力のある⑩熊澤和希と⑭左部開斗、途中から司令塔の役割を担った⑮木村聖が躍動して、何度もチャンスを演出していく。さらに後半19分には182センチのFW⑲古谷優斗を投入して1トップでシンプルに前に当てる戦い方を選ぶと、彼らの強さは盤石になっていた。

 高さとスピード、球際の強さなど、総合力で流経大柏にかなわない星稜に残された道は、セットプレー以外ではコンビネーションを生かした組織力であり、サイドバックの③湯澤拓士が駆け上がる形や、前線の3人が呼吸を合わせて連係する形など、多彩な攻撃パターンで、最後まで対抗しようと試みた。

 しかし──。

「情けない、あれ(CKからの1点)だけでは。よかったのは失点しなかったことと、なんとか勝ち切ったことだけ。もう少しセカンドボールを拾えないと。中盤の拾い方、そこからの攻撃は相手がうまかった」

 本田監督は試合後、相手を認めながら、自分たちの戦いを戒めた。しかし「情けない」と言いつつも、攻撃力のある相手に対して多くの時間で優位に立って、「流経強し」の印象を残したことは間違いない。

「目標は優勝ですが、先を見ていない。1試合1試合、負けないこと。その結果、日本一になれたらいい」(本田監督)と、昨年度準優勝校におごりや慢心はない。流経大柏は5日、どんな戦いを見せるのか。

監督・選手コメント
流通経済大柏・本田裕一郎監督
情けないですね、あれ(CKからの1点)だけでは。ただ、昨日は(前半4本、後半にも)8本のCKがあって決められなくて、⑤関川はようやく当たりました。点差がないうちは猛チャージでプレスを掛けて、そこからの素早い攻撃を心掛けていて、負けたら終わりのトーナメントでは特に、ポゼッションよりもスピードを追求しています。なのでミスは多いです。そういうミスはOKという攻め方をしているので、ミスを承知の上で、怖がらないで速さを優先しようと。よかったのは、失点しなかったことと、なんとか勝ち切ったことだけ。もう少しセカンドボールを拾えないといけません。チームは優勝を目指していますが、それは目標。1試合1試合、常に負けないこと。あまり先を見ていません。その結果、日本一になれたらいいと思っています。

流通経済大柏・⑤関川郁万
昨日はセットプレーで決められていなかったので、そこが今日の課題でしたし、結果を出せてよかったです。味方が自分のマークをブロックしてくれたことでフリーになれたので、練習どおりのことができました。チームとしては優勝が目標ですが、個人的には選手権で決めること、ヘディングで決めることが目標だったのでよかったです。自分は対人もそんなに強くないし、声で動かせるタイプのセンターバックではないので、試合に出続けるためには相手を弾き返して、点を決めることを目指してきたので。それと無失点についても、守備もGKも含めて全員でこだわってきましたし、体を張ってみんなで守備ができていたと思います。

流通経済大柏・⑪芹田悠真
昨日は(後半に)8本もCKがあって1点も決められなかったので、さすがにアシストしないといけないという危機感がありました。(CKのキッカーとして)いいボールを蹴ることに集中していました。昨日から変えたことは特にないのですが、初戦だったということもあって、自分では気がつかないうちに筋肉に力が入っていたのかなと。今日は、自分たちのやりたいサッカーができていない時に、相手にセカンドボールを拾われて、その後ができなかったので、自分たちの選択肢を増やせるようにチーム全員で意識してやっていきます。

星稜・河﨑護監督
昨日の試合もそうですが、ロングスローを含めてセットプレーに注意しようと話していたのですが、(失点シーンは⑤小平大輔が)飛べなかったですね。ただあの1点で決まるとは思っていなかったので、同点を信じて、逆転を願って、前半は少しは攻めることができました。後半は(前半終了間際の)キャプテンの負傷交代が痛かったですね。⑨有馬も(前半から)頑張っていましたが、後半はちょっと消えていました。⑪西部とキャプテンと⑨有馬の3人がそろわないとうまくできないですね。交代した⑭川本は(昨日とは反対の右に置きましたが)、昨日と同じようにボールを運んでもらおうと思っていました。今日の試合が一つの大きな山でしたが、(連戦で)体力的な厳しさもある中で、選手はひるむことなく堂々とプレーしてくれたと思います。

星稜・⑤小平大輔
(CKの失点シーンは)自分が競り負けたので、それ以外は何もないです。相手に走られてブロックされて、フリーにさせてしまいました。立ち上がりは意識をしていましたし、固さもなく悪くなかったのですが……。逆に自分たちも、試合の前から狙っていたセットプレーからチャンスを作りましたが、惜しいで終わってしまっては何もならないですから。(前半終了間際に)キャプテンが負傷して、その分まで頑張ってやろうと思っていたのですが、いつもはそこに収まっていたので、彼がいなくなったことは大きかったです。

星稜・⑨有馬大勢
(前半にミドルシュートがクロスバーをたたいた場面は)ファーストタッチで外せばいいところに持っていけるかなと思っていて、うまく転がってくれたので、あとは思い切り打つだけでした。あれが決まっていればどうなったかわからないので悔しいです。⑩岩岸には、(ケガをして担架で運ばれたときに)「自分にキャプテンマークを任せてくれ」と言いました。みんなにも「あいつの分までやるんだぞ」と。でも「絶対に勝つから任せておけ」と言ったのに応えられなくて、それでもあいつは、試合後に「ありがとう」と言ってくれて、胸にくるものがありました。1、2年生のときに結果を出せずに悔しい思いをして、3年目でみんなを選手権で上に連れて行こうと思っていたのに、それができなかった悔しさと、あとは3年間、支えてもらった親への感謝があります。心残りではありますが、自分の中ではやり切ったという気持ちが一番です。

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