第97回全国高校サッカー選手権大会 全試合完全レポート

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第97回全国高校サッカー選手権大会
2回戦 流通経済大柏-徳島市立

2019年01月02日

河合拓(フリーライター)取材・文
古賀庸介 写真

19年1月2日(月)12:05キックオフ/千葉県・フクダ電子アリーナ/観客8,028人/試合時間80分
流通経済大柏
2 0-0
2-1
1
徳島市立
熊澤和希(後半20分)
熊澤和希(後半31分)
得点者 岡健太(後半16分)

流経大柏が徳島市立を攻め立てるものの得点を挙げられないまま時間は進む。結局、前半はスコアレスで終了した。後半も流経大柏は左右にボールを動かし、シュートを放っていくが、GK①中川真の好守にも阻まれてゴールを奪えない。後半16分、徳島市立はカウンターから⑨岡健太が得点を決めて先制する。流経大柏もその4分後、⑩熊澤和希が同点ゴールを決める。後半31分には熊澤がPKを決めて逆転。これが決勝点となり、2-1で流経大柏が3回戦進出を決めた。

交通事故から復帰した徳島市立の岡健太
カウンターでの先制点も勝利ならず

 まさに電光石火のカウンターだった。後半からピッチに立った徳島市立のFW⑨岡健太は後半16分、後方からのロングボールに反応すると、ドリブルで流経大柏の守備を破って右足でシュートを決める。その後、スローインの流れからの失点と、PKによる失点を喫して徳島市立は1-2で逆転負けを喫したが、岡の残したインパクトは強烈だった。

 試合後、スピードスターが先発を離れたのは、大会直前に交通事故にあっていたからだったことが、監督の話で明らかになる。12月20日の下校中、自転車に乗っていた岡は、車に追突された。車に当たったのは左足で、翌日は腫れもひどく動けなかったという。それでも足をかばいながら、22日からの宮崎遠征に帯同、病院の医師の懸命な治療もあって、動けるようにはなった。

 しかし、左足の痛みをかばいながらプレーしたことで、右足にも影響が出てきていたという。結局、高校サッカー最後の舞台となる選手権も先発を外れることになり、2回戦当日も座薬を打って、後半からの出番に備えていた。

「ダッシュも8割くらいでしか、走れなかったですね」と、悔しがるが、そこにあるのは悲壮感ではない。「けど、チャンスがあって、そこで点を決められてよかったです。この3週間くらいで先発メンバーに3人くらい負傷者が出ていたんです。できたらフルメンバーで戦いたかったですね」と清々しい。

 岡の家は母子家庭、4人兄弟で金銭的な余裕はないという。高校選手権で履いていたスパイクも、1年近く使い、ボロボロになったものだった。

「今日、お母さんが見に来てくれていたので、恩返しをしたいと思っていました。1点取れて恩返しできたかなと思うのですが、あそこまで行ったら、勝って、最高の恩返しをしたかったですね」

 もう一人、恩返ししたい人がいた。河野博幸監督だ。「僕が1年のときに、選手権で使ってくれました。でも何もできずに、徳島に帰って辛くて泣いていたんです。そうしたら監督に『お前は何もしていないんだから、切り替えて頑張れ』と言われました。それで2年間、得意じゃなかったシュートや足元の練習をしました。めっちゃくちゃ努力して、今日、点を取れたので、先生にも恩返しできたかなと思ってうれしかったですけど、先生も勝たせたかった」

 ミックスゾーンで取材を受けている途中、通りかかった後輩から「坊主、早く!」と声を掛けられるイジられキャラ。40分で記憶に残る活躍をした徳島市立の9番は、卒業後も産業能率大に進学し、サッカーを続けるという。

「うちには母さんしかいません。恩返しをするには、今まで頑張ってきたサッカーしかない。親孝行はこれから。プロになって恩返しをしたい

 大学でも、坊主頭は変えないという岡。高校サッカーは終わったが、そのサッカー人生はまだまだ続く。

監督・選手コメント
流経大柏・本田裕一郎監督
入り方も内容も悪くなかったと思いますが、ちょっと苦しめられました。相手チームにもいい選手がいるので、用心はしていましたが、難しい試合になりました。よく勝ち切ったと思います。1回戦は絶対五分五分だという話をしていて、その通りになってしまいましたが、乗り切ったので、次の試合をまた頑張りたいと思います。

流経大柏・⑩熊澤和希
今日の出来は、前半が60点くらいで、後半は点も取れたので70点くらいですね。少しミスが目立って、1失点目も絡んでしまったのでそれくらいです。初戦の難しさは感じましたね。でも先制されても、攻めている時間が長かったので、時間が過ぎれば点を取れると思えていました。「ヤバイ」という雰囲気がなかったのが、よかったです。PKは上にだけは蹴らないようにと思っていたところ、上に行ったのですが、運良く決まりました。前半の戦い方はチームとして徹底できず、速攻ができなかったので、まだまだです。

徳島市立・河野博幸監督
先制点を取って、5分でやられましたよね。負傷してコンディションが上がらなかった選手が数名いたのですが、万全の状態でもう少しできたら、もうちょっと面白いことができたかなと思います。でも、代わりに出た2年生が、この1か月少しでだいぶ成長しました。それは一つ収穫です。(岡の先制点は)一本、狙っていました。0-0、0-1であれば、後半の立ち上がりからと決めていました。もっとキレがあるし、あれを90分やれるので、本当は最初から使いたかったですね。彼らあってのチームだったので。

徳島市立・⑨岡健太
先制ゴールの場面は、GKが前に出てきていたのですが、ボールが僕からも遠くにありました。近くまで行って踏み込んだら、相手もスライディングしてくるかなと思ったので、足を伸ばしてトーキック気味に蹴りました。そうしたらコースもいい感じに行って、入ってくれました。みんなコンディションを上げていたし、前半も0-0で先制できたので、「絶対に勝てる」と思っていたんですけどね。プレー中は痛みを忘れてプレーできました。

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