第97回全国高校サッカー選手権大会 全試合完全レポート

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第97回全国高校サッカー選手権大会
1回戦 星稜-関西学院

2019年01月01日

本田好伸(フットボールライター) 取材・文・写真

18年12月31日(月)14:10キックオフ/千葉県・県立柏の葉公園総合競技場/観客4,400人/試合時間80分
星稜
2 1-0
1-0
0
関西学院
岩岸宗志(前半6分)
岩岸宗志(後半16分)
得点者  

立ち上がりから味方同士がコンパクトな距離感でスペースを与えない戦いを展開する両者だったが、最初のチャンスを迎えたのは星稜。前半6分、ロングボールのこぼれ球に反応した⑩岩岸宗志が右足で決めて幸先良く先制点を奪った。この1点で流れを呼び込んだ星稜が試合を支配していくと、相手に1本もシュートを打たせることなく試合を折り返した。その後も主導権を握ったのは星稜。後半16分には左CKのクロスを中央に飛び込んできた⑩岩岸が合わせてリードを広げると、ポゼッションを高めながら盤石の強さを発揮。後半に入っていくつかのセットプレーから相手にチャンスを与えたものの、試合を通じて攻守が機能。終わってみれば、相手シュートを1本に抑え込むなど、50年ぶりに出場した関西学院を寄せつけずに星稜が勝利を収めた。

試合を決めた“経験値の差”
50年ぶりの完敗の意味とは

星稜は28回目、関西学院は10回目の出場。ともに全国経験校同士の対戦だったが、両者には決定的な違いがあった。平成に入ってから、星稜が全国を“逃した”のはわずか6回だけで、一方の関西学院は、平成どころか、今回の出場が実に50年ぶりという、悲願の全国出場だったということだ。

チームは、メンバーも含めて毎年変わっていくため、「何回出場したか」は記録の話だけであり、多くの選手にとって「毎回が初出場」だという見方はもちろんある。しかし、脈々と受け継がれる伝統もまた確実にある。全国の常連と言われるような強豪校はやはり、それだけで大きなアドバンテージがあるのだろう。

「常連校との経験値の差が前半の立ち上がり5分で出てしまいました」

関西学院の山根誠監督がそう振り返ったように、「試合の入り方」は、特に大会初戦のキモだった。星稜が相手のクリアボールを拾えたことも、⑩岩岸宗志のシュートが枠をとらえたことも、試合全体で見れば小さなことかもしれないが、開始わずか6分で生まれた先制点は、確実に両者の明暗を分けた。

「選手には、落ち着いて、勇気を持って(試合に)入れと話していたので、そのミーティングの中身をよく理解してくれて、先制の後も積極的にやることを変えずに守備からいくことを意識してくれました。緊張する前に、緊張していると気づく前の時間帯にほぐれたと思いますし、先制点の意味は大きかったです」

本田圭佑など数々のトップ選手を育成してきた名将・河﨑護監督のその言葉には重みがある。スピードやプレッシングの強度、連係、空中戦など、あらゆる局面で相手を上回った星稜だったが、たとえ戦力や技術的に上回っているとされていても、“大会初戦の難しさ”の前に敗れ去ったチームは数え切れない。

前半で相手に与えたシュートはゼロで、後半もわずかに1本の守備面と、中盤で主導権を握って攻撃面でも常に優位に進めた星稜は、自分たちの力を、この大舞台で存分に発揮しているようだった。

2点目の左CKからのゴールは、監督も選手も「練習でやってきたもの」と口をそろえる。エリア内に2カ所の密集地帯を作って、その間を縫うように中央へ抜けてきた⑩岩岸は完全にフリーだった。彼自身「あれは僕が決める形になりましたけど、チームの得点だったと思います」と念を押した。

こうした“練習どおり”を実戦で見せた星稜はやはり、強かった。

「(勝って)年を越せる安堵はあります。初戦の難しさを嫌というほど見てきましたからね。緊張したり浮き足立ったり、普通に起こります。どうやってその緊張感をとって、普段どおりにできるかが課題でした」

河﨑監督はそう笑みを浮かべたが、指揮官を含めた「強豪校の経験値」が今回は勝ったのだ。と同時に、こうした経験の積み重ねこそが、97回の歴史を誇る今大会を盛り上げてきた大きな要因だとも言える。

「ずっと県大会で終わっていたので、うちが“県大会のサッカー”のままで50年間、停滞していたんだと思います。もっと外に出てレベルの高いところとやらないと。うちの関西学院大のレベルも高いですし、その胸を借りて、もっと厳しいサッカーをしていかないと、今日の負けがつながっていかないと思います」

山根監督はそんな言葉を残して大会を去った。関西学院が手にした経験が、また次の世代の経験となって今大会を盛り上げていくのだろう。そんな“敗者の未来”に期待したくなる一戦だった。

監督・選手コメント
星稜・河﨑護監督
選手には、落ち着いて、勇気を持って(試合に)入れと話していたので、そのミーティングの中身をよく理解してくれて、先制の後も積極的にやることを変えずに守備からいくことを意識してくれました。緊張する前に、緊張していると気づく前の時間帯にほぐれたと思いますし、先制点の意味は大きかったです。次の明秀日立は昨年敗れた相手ですが、フィジカルもあるし、最終ラインの高さやGKを含めて、そう簡単ではないことはわかっています。うちはチャレンジャーなので、選手のやってやるぞという気持ちが出れば、こちらから何も言わなくても燃えてくれるかなと思います。

星稜・⑨有馬大勢
早い段階で⑩岩岸が決めてくれたので落ち着いてプレーできました。ただ個人的な出来は、100点満点で5点くらいです。チームに迷惑をかけているのでまだまだです。点を決めるところやラストパスが持ち味なので、試合を決められるようにしたいです。昨年はケガでスタンドから見ていましたが、先輩たちが泣きながらスタンドに来る姿を見て、自分たちが来年、ここに戻ってきてテッペンを取らないといけないなと思いました。先輩方が今日の試合後にも来てくれて、モチベーションが上がっています。

星稜・⑩岩岸宗志
いつもチームが勝つための得点を心掛けていますし、初戦は硬くなると話していたので、その緊張を解くようなシュートが得点として決まったので本当に良かったです。全国大会は個人的にはこれで4回目の出場ですが、まだ無得点でしたし、チームへの貢献という意味でもこだわっていたので2得点はうれしいです。昨年、先輩が(明秀日立に)負けて悔しい思いをして引退していきました。僕は負けた瞬間は交代してベンチにいましたが、いちばん近くで先輩の悔し涙を流している姿を見ていますし、自分たちがリベンジする気持ちでしっかりと勝ち切りたいです。

関西学院・山根誠監督
常連校との経験値の差が、前半の立ち上がり6分で失点という形で出てしまいました。そのあとは、なんとか耐えながら相手のスピードやプレスには慣れてきましたが、やはり空中戦ですね。そこの高さは相手のほうが何枚も上手だったと思います。それに縦に早く、スペースを使ってそこに人も入ってきますから、チーム全体の体力の消耗がありました。ハーフタイムでは次の1点が勝負だよと話していたので、2点目が致命傷になりました。全国のサッカーはこういうものだということを肌で感じました。それでもまだ若いチームなので、今日の負けを糧にして普段の練習からやっていけば、また全国に出るチャンスはあると思っています。

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