第95回全国高校サッカー選手権大会 全試合完全レポート

PUMA

PUMA

第96回全国高校サッカー選手権大会
決勝 前橋育英-流通経済大柏

2018年01月09日

川原宏樹(本誌)取材・文
高橋学 写真

18年1月8日(月・祝)14:08キックオフ/埼玉県・埼玉スタジアム2OO2/41,337人/試合時間90分
前橋育英
1 0-0
1-0
0
流通経済大柏
榎本樹(後半45+2分)
得点者  

ここまで15得点1失点と圧倒的な攻撃力を誇り勝ち上がってきた前橋育英と、8得点0失点と堅固な守備をベースに勝ち上がってきたインターハイ王者の流通経済大柏の対戦は、決勝戦らしい息をもつかせぬ緊迫した展開となった。堅守を誇る流通経済大柏は、前橋育英の2トップにマンマークをつけて抑える作戦に打って出た。こう着した状態が続く中、後半19分に前橋育英は⑬宮崎鴻を投入。ここから大きく流れが変わり、前橋育英が波状攻撃でゴールに迫っていった。そして、アディショナルタイムに㉒榎本樹がこぼれ球を押し込んで、前橋育英に待望のゴールが生まれた。そのまま逃げ切った前橋育英は、見事に初優勝の栄冠に輝いた。

相手に合わせたサッカーと
自分たちのスタイルを貫くサッカー

インターハイ王者といえども、前橋育英の攻撃力は怖かったようだ。

「やっぱり守備的にやらざるを得なかった。前橋育英の攻撃力がうちよりも上をいっていました」と流通経済大柏の本田裕一郎監督が語ったように、前橋育英の2トップの⑩飯島陸に対しては守備のスペシャリスト⑳三本木達哉、㉒榎本樹には⑤関川郁万がマンマークについた。その堅い守備には、高い攻撃力を誇る前橋育英も、前半はシュート2本に抑えられてしまった。

後半も同様の流れは続いたが、19分に流れが変わる。

ピッチ脇に⑬宮崎鴻が控えていたとき、これまでどおり㉒榎本との交代と思われたが、⑧五十嵐理人と交代で出場し、⑬宮崎と㉒榎本の2トップにポジションを変更。そして、⑩飯島が左サイドへとポジションを移した。

「最初は㉒榎本樹と⑬宮崎鴻が代わると思っていたんですが、⑧五十嵐理人と代わって守備のバランスが崩れてしまいました」と⑩飯島のマンマークだった⑳三本木が振り返ったように、流通経済大柏の守備は一時明らかに混乱していた。そのスキをついて前橋育英は左サイドを中心に猛攻を仕掛ける。流通経済大柏は後半40分に、⑫佐藤蓮に代えて⑧金澤哲流を入れ守備を整え直したが、前橋育英の勢いは止まらず、アディショナルタイムにゴールを割られてしまった。

焦れずに自分たちのスタイルと貫いた前橋育英は、マンマークをされていた⑩飯島のシュートからチャンスが生まれ、㉒榎本が決める自分たちらしいゴールを生むことになった。

近年の大会の傾向だが、相手を研究し相手の良さを消すことを目指すサッカーと、自分たちの目指す理想のスタイルをやり切るサッカーに二分されている。今大会の決勝はその縮図ともいえる対戦で、非常にレベルの高い至高の戦いとなった。

今大会は自分たちのスタイルを貫いた前橋育英に軍配が上がったが、どちらのサッカーがいいとも悪いともいえないし、強いとも弱いともいえない。ただ、自分たちの信じるサッカーに対して、気持ちを込めて一生懸命に戦った全選手たちに拍手とエールを送りたい。そして、今後この舞台を目指す選手たちには、どのサッカーが自分に合っているのか、よく見てよく考えて進学してほしいと思う。

監督・選手コメント
前橋育英
山田耕介監督
去年の0−5(での敗戦)から始まったんですけど、とにかく1年間歯を食いしばってボールを追い続けた結果が今日は出たんだと思います。
同じゾーンでやっちゃうと多分つぶされちゃうので、一回ゾーンを変えてチェンジサイドでも1度落とすなりして、そこから縦パスやくさびをやらないと無理だよと話をし、展開をしてゾーンを変えたときはやっぱりリズムがよかった。後半も半分過ぎくらいからリズムがよくなり、前半は圧力に押されていたような気がします。
実際に決勝のピッチ上にいるということは、ものすごい財産になる。その経験者が何人もいるというのは、ものすごく大きいことでした。今年もここでやらせていただいたので、それが財産になる。ただ、自信はいいんだけど、変な慢心になってしまうとダメ。
ホッとしました。また負けるといろいろ言われるな、「また準優勝かよ」といろいろな人から言われてしまうのかというのが脳裏から離れなかった。その後、頭をよぎったのが、「生徒たち、本当におめでとう。よかったな」ということでした。
去年の0−5が本当に大きかったと思います。切り替えるのに、⑭田部井涼なんかは1週間くらいぼーとしてしまったと言っていたくらい、0-5という強烈でした。本当に、練習試合でもないですからね。そこから強くなっていったんだと思います。「0-5を絶対に忘れるな、ここからだ。限界なんてないんだよ」と声をかけました。忘れるようなこともあったんですが、またその映像を見せて「ほら、忘れているだろ」と言ったこともありました。
⑩飯島陸は出ていなかったんですが、インターハイのときもマンマークされたことがありました。3バックか5バックでくるとしたら、おそらく1人を余らせて2トップにマンマークにくるかもしれないと言っていました。それは普段とシステムを変えてくるということで、「それはどういうことかわかるか?」と。「それはおまえたちを恐れているからだぞ。マンマークだからといって慌てる必要はない」と試合前に話をしました。

⑩飯島陸
やっとここまで来て優勝することができたと気持ちが大きく、うれしかったです。
自分にマンマークが来るということは、それ以外のところへ行ってマークを2枚にするという動きとかも考えていたりしました。そして、自分がその選手をかわせればチャンスになるということはわかっていたので、動き出しの部分を意識してやっていました。
(得点につながったシュートを)打った瞬間に、やってしまったなと思ったんですけど、㉒(榎本)樹がうまく詰めてくれたのでよかったです。

⑭田部井涼
最高でした。これからの人生でもないんじゃないかという(景色で)目に焼きついています。去年の0-5で敗れた試合が焼きついているから、倍以上にうれしかったですね。
相手にサッカーを合わせなかったところが、勝敗を分けたいちばんのポイントだと思います。インターハイのときには、㉒榎本樹と⑬宮崎鴻のツインタワーのような形だったんですけど、そこにロングボールを入れすぎていました。相手の⑤関川郁万もヘディングが強く跳ね返されて相手のペースになっていきました。そういうところを相手に合わせなかったというのが、勝敗を分けたポイントだと思います。
(サイドから攻撃をすれば)チャンスになると思っていたので、やり続けるというか、焦れないというのをみんなに声をかけていました。

⑤松田陸
今日は前線の選手がマンマークされていて空いてくるところが絶対にあると思ったので、そのスキを狙っていました。コーチも言っていたんですが、相手がシステムを変えるということは自分たちを嫌がっているということなので、今大会は攻撃力というところを出せたから流通経済大柏も嫌で変えてきたのかなと思います。インターハイでは3位という結果に終わって、そこから立て直すというかチャレンジャーと思い直し、プリンスリーグで流通経済大柏に勝てて、行けるぞという感じになりました。

③角田涼太郎
(DFラインの)4人全員が残っていて、5失点した悔しさは全員が持っていました。また、やっぱり埼スタのピッチに慣れていた部分もありました。ひとりひとりのレベルが高いので何も言わなくてもできる部分があります。あとは、カバーリングに入るところには入るなど合わせる部分を合わせていけばよかった状態でした。

㉒榎本樹
インターハイ得点王というのもあり得点を期待されていて、「決勝では点を取ってこい」とか言われていたので結果が出せてすごくうれしかったです。代えられるんじゃないかと思っていましたけど、監督も自分に期待してくれて代えられなかったので、結果を残してやろうと思っていました。⑤関川郁万もヒザとかを痛めていたので、五分(の状態)だから負けるわけにはいかないと思っていました。たまたま自分のところにボールが転がってきて自分はフリーでした。それでシュートを打ったらたまたま相手の股を抜けてゴールに突き刺さったので良かったかなと思います。焦れずに何度もゴールに向かっていくことが重要なので、そこで切れてしまっては点も取れないのであきらめずに狙っていきました。

流通経済大柏
本田裕一郎監督
悔しい……でも、生徒たちはよくやったと思います。今日はやる前から、「勝つか負けるかのどっちかだね。どちらかが負けてどちらが勝たなければならない。これは宿命だから仕方がない。どっちに回るほうがいいかといえば、勝つほうに回るほうがいいよな。だから、負けても悔いのないように暴れまわってこい。終わりに泣いて終わるというはなしな」ということを話しました。生徒も私以上に悔しいと思いますけど、終わってみればよくここまで来られたなというのが感想です。
やっぱり守備的にやらざるを得なかった。前橋育英の攻撃力がうちよりも上をいっていました。「負けに不思議なし」で、負けるべくして負けたかなと思います。
⑳三本木達哉には、インターハイのときにも相手のエース殺しということでやっていました。今大会のこれまでの戦いでは、特にそういう選手が見当たらなかったので彼には出番がなかったんですが、「(今日は)さあ、出番が来たね」ということで、頑張っていて仕事をさせなかったんじゃないかと思います。⑩飯島陸はすごい能力ですからね。放っておいたら何点取られたかというくらいの能力ですから、⑳三本木はよく頑張って抑えたと思います。
今日は生徒たちに、「5段階までで評価すれば、4近いところまでは来られたよね」と話しました。特に、ディフェンスのところは、サッカーの原点に近いような「ボールは1つしかないから、それを取らないかぎりはダメだよね」というところからスタートしました。その1つのボールをどう奪うかというところからスタートして、最初のうちはファウルだらけでめちゃくちゃでした。ゆっくりはできるようになったけど、スピードが上がると今度は攻撃がおろそかになりミスだらけになる。それが夏前の状態だったと思います。そこから徐々によくなってきたのはインターハイを優勝した後だったと思います。今日はさすがにやらせてもらえませんでした。ですが、私としてはまあまあ満足のいくチーム作りができて終えられたかなと思います。大会形式が違えば、(別に勝ち上がってくることができた)もっと素晴らしいチームがいっぱいあったと思います。よくここまで上がって来られたなというのが本音で、ここまで来られたことを褒めてあげたいです。
いつもやっていましたけど、前半は0-0。前半は0で、後半は勝負。ということだったんですが、なかなか勝負をかけられませんでした。策がなかなか見つからなかった。もうちょっと前線でボールが収まるかなと思いましたし、競り合いで勝てるかなと思っていたのですが、それが誤算でした。

⑳三本木達哉
すごく悔しいんですけど、やっぱり向こうのチームのほうが強かった。
今日は⑩飯島陸をマンマークするという仕事を受けて、ずっとマークをしていて⑩飯島選手からは失点しませんでしたが、結果的には自分の目の前で失点してしまったので、すごく悔しいです。サイドバックのときも1対1の守備は負けないということが自分の特徴だと思っているので、そこを監督が買ってくれて今回こういう仕事をくれたので、全うしたいと思ってやっていました。自分のところだけはずっと(⑩飯島に)ついていって10人対10人でやるといった指示だったので、自分はどこに行ってもついていけという指示を受けていました。攻撃もやらなくていいという指示で、自分のチームが攻撃しているときもずっとマークについて相手に触らせないようにという気持ちでやっていました。
(⑩飯島とは)プリンスリーグでもやったことがなく今回が初対戦で、前日にミーティングで試合を見て自分なりに研究をしましたが、思った以上に動き出しがうまかったなという印象でした。裏への抜け出しがうまいなという印象だったので、体を当てて抜け出させなかったりとか、自分よりも体が小さいので体で押さえたりしようと思っていました。ですが、うまく抜けられてしまった部分もあったので悔しいです。
最初は㉒榎本樹と⑬宮崎鴻が代わると思っていたんですが、⑧五十嵐理人と代わって守備のバランスが崩れてしまいました。そのときにうまく修正できなかったのが問題になりました。そのあたりをうまく声をかけてバランスを取れればよかったです。サイドだと自分が最初にやっていた感覚とは違ったので、うまくいかない時間帯もありました。

④宮本優太
(マンマークのシステムは)よくやっていたことなので慣れていた部分はありますが、相手のほうがひとつ上だったなと、それで自分たちのリズムが作れなかったなと思います。いつもならはね返して攻撃につなげられていたんですが、はね返したボールも相手に取られてしまっていたので、相手がすごかったとしかいいようがないです。

⑤関川郁万
ずっと攻められる時間が続いて、早く裏に蹴らなきゃという思いがある中で大きくはね返せなかったのが、ずっと攻撃されていた原因だと思います。自分がリーダーシップを発揮していれば、もっと高い位置にクリアしていたら、あのロングスローはなかったと思うので自分が責任を感じています。

img
img
img
img
img
img
img
img
img
img
img
img
img
img
img
img
img
img
img
(C)Gakken Plus Co.,Ltd.
ページトップへ