第95回全国高校サッカー選手権大会 全試合完全レポート

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第96回全国高校サッカー選手権大会
1回戦 星稜-松山工

2018年01月01日

本田好伸(フットボールライター) 取材・文・写真

17年12月31日(日)14:10キックオフ/千葉県・ゼットエーオリプリスタジアム/観客3,006人/試合時間80分
星稜
1 0-0
1-0
0
松山工
西部悠大(後半12分)
得点者  

2年ぶりに選手権に戻ってきた第93回大会の覇者・星稜だが、立ち上がりは全国大会初戦の難しさからか、“らしさ”を見せられなかった。左サイドの⑭長田大樹が再三にわたってドリブル突破してチャンスメークしたが、なかなかゴールをこじ開けられない。すると21分には、松山工にゴール前のFKを与えてしまったが、このピンチはGK①新保大夢の好セーブで凌いだ。スコアレスで迎えた後半、少しずつリズムを取り戻した星稜は、後半12分、右サイドの⑱岩岸宗志からのパスをフリーで受けた⑬西部悠大が落ち着いて決めて先制に成功。徐々に落ち着きを取り戻した星稜は、後半は相手に1本もシュートを打たせないほどの盤石のゲームメイクを見せて完封勝利。2度目の日本一に向けてまずまずのスタートを切った。

27回出場、優勝1回のDNA
ピッチで見えた点差以上の“差”

「まるで小学生がするようなミスをするので、『落ち着いてくれ』と心で祈るだけだった」

試合後にそう振り返ったのは、30年以上にわたって星稜を指揮してくる中で、本田圭佑、豊田陽平、鈴木大輔といった日本代表選手を育て上げてきた名将・河﨑護監督だった。

確かに、祈る気持ちもわかるくらい、勢いがない星稜の立ち上がりだった。前半は左サイドの⑭長田大樹が仕掛けまくって何度も何度もドリブル突破を見せたが、そこからフィニッシュパターンへとつなげられない。しかも「右サイドが全く機能していなかった」(河﨑監督)と、効果的な形は左サイドにしかなかった。

ただし「それでも負けない」というのが、全国に27回も出場してきた常連校の強さなのだろうか。ミスがあったとしても、それが決定的なピンチにならない。前半で一度だけ、相手の直接FKから失点の危機を招いたが、GK①新保大夢のセーブでことなきを得た。松山工のシュートは前半このFKを含むわずかに2本だった。

2年ぶり6回目の出場となった松山工を、結果的には全く寄せ付けなかった。特に後半12分に先制点が入ってからの戦いぶり、試合運びは盤石そのものだった。

河﨑監督が使った交代カードは3枚。後半17分に⑨肥田稜平、後半32分に㉒鈴木旺寛、終了間際の後半40分に⑯森井啓太、いずれもFWの選手だった。これは確かに「追加点を決める」という意思表示に違いないが、1点を奪ってからさらに攻撃の選手を投入して前線の運動量を上げることで、相手の攻撃の芽を早い段階で摘み取って、結果的に中盤から自陣の選手の労力を減らすことができていた。

さらに、この展開で圧倒的な力を示したのが⑩高岸憲伸だった。

⑦松本秀太とのダブルボランチのようにも見えるが、⑦松本がアンカーを務め、⑩高岸はより攻撃に力を割いた。「⑦松本が守備でがっつり行って相手をつぶしてくれるし、ボールを奪ったらシンプルに預けてくれる。すごく信頼しているし、安心して後ろを任せられるからこそ、自分が攻撃に行ける」(⑩高岸)。⑦松本との連係がハマっていたことで、⑩高岸は後半に入ってから一段とギアを上げた。

「自分はボールにどれだけ関われるかがすべて。それができればチームが落ち着くから、どれだけ運動量を増やせるかということに意識を置いている」

本人がそう語るように、⑩高岸がボールを持つと、仲間は自然と前へと動き始める。そして一人が動き始めると、その動きが全体に連鎖していく。前半に左サイドに偏っていたチームは最後、右にも左にも、中央からも攻められるバリエーションを見せていた。前半を「まるで初出場のときの雰囲気のようだった」と河﨑監督が振り返っていたが、そうであるならば、後半に見せた強さもきっと、まだ100パーセントではないだろう。

27回出場、優勝1回を誇る“星稜のDNA”を選手に継承する名将は、3年前の優勝チームと比較して「自信がいちばん足りない」としながらも、「いいところはある」と、不敵な笑みを浮かべながらそう話す。

スコアは1-0だったが、ピッチで繰り広げられていたサッカーの質には、点差以上の差があった。それはおそらく、⑩高岸が意識していた「試合を作る」というところに起因する。どんな展開でも自分たちのペースで試合を進めていき、最終的には勝利へと導く。

この先100パーセントの星稜が見られたとき、彼らは二度目の栄冠を手にしているはずだ──。

監督・選手コメント
星稜
河﨑護監督
前半はミスも多くて、まるで初出場のときのような雰囲気でした。それでも0-0だったので、ハーフタイムに「慌てることなくいくぞ」と一呼吸おけたのでやることが整理できました。前半はDFと中盤のラインが空いていましたし、同じサイドばかりで狭い幅でやってしまっていました。3年前の優勝チームと比べると、柱になれるキャプテンやリーダーになれる選手はいるのですが、どこか自信がないことがいちばんの差だと思います。2回戦はもう少しリラックスして、持ち味を出せるようにできたらいいと思います。

⑩高岸憲伸
試合前から緊張している選手が多かったですが、それを口に出せていたのでそこまでガチガチではなかったと思います。でもボールをすぐに蹴ってしまう場面が多かったので、そこで自分を経由して落ち着けさせられるようにと意識しました。前半はボールを離すのが遅くなって失うことが多かったのですが、後半はもっと自信を持ってボールをキープすることで冷静にやれていた面はあると思います。目標としては「優勝」というよりも、目の前の試合を全力で戦い、勝ちを繰り返していくことで優勝に届いたらベストですね。

松山工
坂本哲也監督
技術もパワーも高さも相手と勝負できるとは思っていなかったので、うちとしてはボールを細かく動かしながら戦うという、チームカラーでもある機動力で挑むことを考えていました。ただ、何度も同じようなやり方でボールを失い、守備の時間が長くなってしまいました。うちは2年生が多いですが、彼らは同学年の中では全国レベルでも、今の力ではまだ通用しないことが課題として見えたと思います。「いい経験」では終わらせたくないので、彼らが今大会の課題をどう改善して、次のチームで核となっていけるか期待しています。

①伊藤元太
チームを後ろから見ていて、DFではよく守れていると感じながらも、一方で攻撃では、ビルドアップのところでもっと冷静につなげればチャンスや決定機を作れたように感じました。みんな緊張していて周りが見えなくなっていたなと。だからこそ、もっとやれたはずという悔しさもあります。僕は中学2年生のときにボランチからGKにコンバートされたのですが、キャッチングもセービングも、すべての基礎技術をもっと追求してレベルを上げたい。成長して、来年また、この舞台に戻ってきたいと思います。

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