第95回全国高校サッカー選手権大会 全試合完全レポート

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第96回全国高校サッカー選手権大会
1回戦 神村学園-秋田商

2017年12月31日

河合拓(フリーライター)取材・文

17年12月31日(日)14:10キックオフ/埼玉県・NACK5スタジアム大宮/観客4,133人/試合時間80分
神村学園
1 1-0
0-0
0
秋田商
高橋大悟(前半38分)
得点者  

序盤から連動した守備を見せる秋田商が試合の主導権を握り、ミドルシュートやセットプレーなどで神村学園を脅かす。しかし前半終了間際に先制したのは神村学園だった。⑥田畑拓武の縦パスを受けた⑭高橋大悟がトラップから意表を突くシュートを放つと、これがゴール右に決まって1点リードで前半を折り返す。後半も秋田商は組織的な守備を見せて神村学園のビルドアップミスからチャンスをつかんだが、攻撃の精度を欠いて得点できず。前半の1点を守り切った神村学園が初戦を突破した。

恩師・松沢隆司監督に捧げる選手権の勝利
「鹿児島県勢として負けられなかった」

この試合での勝利に誰よりもこだわっていたのは、神村学園高の有村圭一郎監督だったかもしれない。鹿児島実業高等学校在学時には、第74回大会に出場し、MF久永辰徳らとともに全国制覇を経験している。指揮官は、この試合に懸けていた特別な思いを試合後に明かした。

「今年は松沢先生が亡くなった年でもあります。松沢先生がつくった鹿児島の高校サッカーを継承する人もたくさんいます。全国で頑張っている人たちに、『頑張ってつなげていこう』というメッセージを少しでも伝えたかった。そういう思いで今日は戦わせてもらいましたし、選手たちにも『頼むから、今日は勝たせてくれ』と伝えていました」(有村監督)

鹿児島実業高を2度の選手権優勝に導き、前園真聖、城彰二、遠藤保仁や松井大輔ら、多くの日本代表選手やJリーガーを育てた松沢隆司監督は、今年8月に多臓器不全のために亡くなっていた。教え子の一人であった有村監督は「生徒の観察に優れていて、心を鍛えて戦える選手にしてくれる人でした。サッカーで何を教わったかはわかりませんが(笑)、ちゃんとピッチで戦える選手になるように導いてくださった」と振り返り、自身の指導もその色を受け継いでいると話す。

そんな特別な思いを持っていた一戦だったが、試合は簡単なものにはならなかった。秋田商は豊富な運動量でプレッシングを怠らず、神村学園のプレーを制限してきた。さらに神村学園の選手たちは、緊張もあって普段のパスサッカーが展開できず、ドリブルを多用してしまい、攻撃が停滞した。「選手たちは硬くなっていて、視野が狭くなっていました。なんであんなにバタバタするんだと思って見ていました」と苦笑する。

この1年、取り組んできた成果が出せない中でも、エースの⑭高橋大悟がゴールを決めて、先制することができた。しかし後半も神村学園の硬さは取れず、秋田商に主導権を握られ続けた。

「秋田商は最後まで運動量が落ちませんでした。ロングスローは警戒していたので、うちも守備で跳ね返せていましたが、後半はセカンドボールを拾われ続けて苦しくなりました。それだけ鍛えられていましたし、強かったですね」

さらに後半20分を過ぎてからは、自陣で相手のアタッカーにパスを出して大ピンチを招く場面も散見。「何本も相手にパスをするから、お互いのユニフォームに白と赤が入っていて、わからなくなっていたのかなと思いましたよ。何度もやられそうになりましたが、よく凌ぎましたね」と、冗談めかして振り返る。そして「でも、最後は松沢先生も後押ししてくれていると思っていた」と、目を細めた。

「松沢監督は怖かったけど、温かかった。できれば僕も『厳しくても、自分のためを思って言ってくれている』と子どもたちに思ってもらえるような指導者になりたい」。そう話す有村監督は、かつての恩師のように、自身の教え子たちとともに日本一を目指す。

監督・選手コメント
神村学園
有村圭一郎監督
後半、相手のスイッチが入るのが思った以上に早くて、後手に回ってしまいました。ドリブルでスタートすることが多く、緊張があったのかボールを長く持ち過ぎていました。もっと幅を取って、縦にボールを入れたかったのですが、横の回数よりも縦に入る回数が多く、横に入ったときもドリブルが多く、攻撃が単調になってしまいました。ゴールは、⑭高橋ならではのシュートでしたね。ああいうことができるから、Jリーグに行ける選手だと思いますし、⑭高橋がいなければ勝っていない。そう思うような試合でした。「らしくやる」というのを今年のテーマにしているので、パスもドリブルも判断してできるようにしたいです。今日は雰囲気にのまれたと思うので、次はリラックスさせてやらせてあげたいなと思います。本当にテクニックのあるチームが相手なので、逃げずに、とにかく良いゲームをしたいですね。

⑭高橋大悟
(ゴールの場面は、)流れも悪かったので、入らなくてもいいからとりあえず1本打たないと自分のリズムを作れないという思いで打ちました。ゴールはまったく見ていません。あの辺にゴールがあるなという感覚で蹴りました。ただ、今日の自分の出来は、100点満点で2点です。あのゴールだけでしたから。チームも2点です。まだ98点分の伸びしろがありますし、僕自身、見に来てくれた人に「楽しかった」と言ってもらいたいのですが、今日はそう言ってもらえる内容ではなかったと思います。次の昌平戦は、どっちがしっかりサッカーをできるかの戦いになると思うので、すごく楽しみです。高校サッカーはロングボールを蹴るっていうイメージに変わりつつあると思うので、僕たちみたいなチームが勝ち上がらないといけないと思いますし、次の試合は見ている人に「面白いな」と思ってもらえる試合をやりたいと思います。

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