第94回全国高校サッカー選手権大会 全試合完全レポート

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第94回全国高校サッカー選手権大会
3回戦 桐光学園-青森山田

2016年01月04日

鈴木智之(フットボールエッジ編集長)取材・文

16年1月3日(日)14:10キックオフ/神奈川県・ニッパツ三ツ沢球技場/試合時間80分+PK戦
青森山田
2 0-1
2-1
PK
5-4
2
桐光学園
成田拳人(後半40+2分)
吉田開(後半40+5分)
得点者 小川航基(前半32分)
小川航基(後半3分)

開始直後から、桐光学園がFW⑨小川航基、MF⑦イサカ ゼイン、⑩鳥海芳樹を中心に青森山田ゴールを攻めたてる。先制ゴールは32分。⑩鳥海のパスを⑨小川が受け、DFと競り合いながら右足を一閃。逆サイドの下に突き刺すという難易度の高いゴールで、桐光学園が先制する。その後も桐光学園がペースを握り、後半3分には⑨小川が⑦イサカのクロスを頭で合わせ、リードを2点に広げる。後半17分に⑨小川がPKを外すというアクシデントがあったが、終始、桐光学園が試合を支配し、アディショナルタイムに突入する。

そこにドラマが待っていた。後半40+2分、青森山田がコーナーキックから、⑱成田拳斗がヘディングで1点を返すと、アディショナルタイム5分に、⑤原山海里のロングスローを⑯吉田開が頭で押しこみ、同点に追いつく。勝負の行方はPK戦に委ねられ、5人全員が成功した青森山田に対し、桐光学園はエースの⑨小川が失敗。1回戦に続き、2点のビハインドを追いついた青森山田が準々決勝進出を果たした。

桐光学園の魅惑の攻撃陣が躍動し
青森山田の守備を蹂躙する

ニッパツ三ツ沢球技場に詰めかけた14,500人の観衆が目撃したのは、勝負の行方がどちらに転ぶかわからない、天国から地獄、地獄から天国への“ジェットコースターゲーム”だった。
80分を終えた時点で、どちらが勝者に近い場所にいたかといえば桐光学園だろう。それぐらい、この日の桐光学園は完璧な試合運びを見せていた。ワントップの⑨小川航基のポストプレーを起点に攻撃を組み立て、異彩を放つドリブラー⑦イサカ ゼイン、2年生ながら名門の10番を背負う鳥海芳樹が、得意のドリブルと正確なラストパスで青森山田ゴールに襲いかかる。

前半32分には⑩鳥海がドリブルで中央を突破し、前線で待ち構える⑨小川へラストパスを送る。2回戦で2ゴールを挙げたエースが、右足で強烈なシュートを逆サイドに突き刺し、先制ゴールをマークした。

バックスタンドのおよそ半分を埋め尽くす声援を背に受け、桐光学園の勢いは止まらない。後半3分には、ペナルティーエリア右奥でパスを受けた⑦イサカ ゼインが、キックフェイントで寄せてくるDFを翻ろうし、左足で柔らかなクロスをゴール前に送る。ボールの先に待っていたのは、エースの⑨小川だった。ヘディングで合わせ、リードを2点に広げることに成功した。

桐光学園は自慢の攻撃力だけでなく、ディフェンスも機能。その中心にいたのが、センターバックの⑥安倍崇士だった。⑦イサカ ゼインと同じ、ボールコントロールを軸とした指導で有名な町田JFCで中学時代を過ごした⑥安倍は、対人プレーの強さで何度もボールを奪い、足元の高い技術で味方にパスをつないだ。

攻撃ではワントップの⑨小川を軸に、⑦イサカや⑩鳥海が高い個人技で青森山田のディフェンスラインを蹂躙し、守備の場面では⑥安倍や③タビナス ジェファーソンといった、個の力に秀でたDFが青森山田の攻撃を封じこめる。

後半17分には⑨小川がペナルティーエリアで倒され、自ら蹴ったPKを外すという誤算があったものの、2-0というスコアは試合内容を忠実に表しており、ロスタイムに差し掛かったところで、桐光学園が準々決勝に進むに値するチームだということは、誰の目にも明らかだった。

しかしサッカーの神様は、ときに想像もつかない結末を用意する。青森山田・黒田剛監督の言葉を借りるならば「奇跡的」な結末が待っていたのだ。最初の奇跡は後半アディショナルタイムを2分過ぎた頃だった。コーナーキックを途中出場の⑱成田拳斗が頭で合わせ、青森山田が1点を返す。GK⑫廣末陸までもが桐光学園のゴール前へ上がり、捨て身という表現がふさわしい攻撃で1点を返した。

名門校がなりふり構わないセットプレーで1点を返す。それまではよくある光景だった。この時点で後半アディショナルタイムは2分を経過。まだ、時間は残されている。そして40+5分、まさかの結末が待っていた。

今大会、青森山田のロングスローの名手として、相手の大きな脅威となっていた⑤原山海里がゴール前へライナー性のボールを投げ込む。それに、途中出場の⑯吉田開が頭で合わせ、土壇場で同点に追いついた。80分を通じて桐光学園が試合を支配しながら、コーナーキックとロングスローという2つのセットプレーで、効率よく加点した青森山田。勝負の行方はPK戦に持ち込まれた。

青森山田が5人全員成功したのに対し、桐光学園は5人目の⑨小川のシュートがGK⑫廣末に止められ、万事休す。準々決勝の切符を獲得したのは、80分を通じて試合を支配した桐光学園ではなく、アディショナルタイムにセットプレーをゴールに結びつけた、青森山田だった。

この試合の明暗を分けたポイントを挙げるならば、後半17分の⑨小川のPK失敗だろう。このゴールを⑨小川が決めていれば、桐光学園は3-0にリードを広げることに成功していた。サッカーの試合で2点差をひっくり返すことはあるが、3点差はセーフティリードといえる。⑨小川にしてみればハットトリックを達成するとともに、チームを安全圏に導くゴールとなっただけに、その代償はあまりにも大きかった。

青森山田・黒田剛監督
奇跡ですね。ミスがあり、プランどおりにいかない中で、選手たちが最後まであきらめずにやってくれました。⑨小川選手を意識しすぎて、ラインが深くなってしまいました。あと5メートル、ディフェンスラインを上げられれば違ったと思いますが、セカンドボールを拾えないことが多くて、プレスに行けませんでした。ボールを相手に拾われる展開が続いたので、苦しかったです。引いている分、手数が足りず、我々がやりたいショートカウンターが不発に終わりました。不甲斐ない状態だったので、後半はもっと前にいけといいました。我々は飛び道具(ロングスロー)もあるし、一発でチャンスを作ることで(勝ちを)拾ってきたゲームもあります。選手権では武器を多く持っているチームが、最後に覆す力になります。幸運をつかむために体を張って走り負けないで、謙虚に逃げないでやりきる。それが高校サッカーだということをいい続けてきたので、それが実現できたと思います。

③常田克人
先に2点取られましたが、1回戦も先に取られたので、心の中では行けるかなと思っていました。(⑨小川選手とのマッチアップは)背が高いのに動きがなめらかというか。自分の持ち味であるヘディングをさせてもらえませんでした。点を決められた場面も、自分がスライディングをしていれば、ボールに当たっていたと思うので、したたかさが足りなかったです。常に首を振って、⑨小川選手がどこにいるかを見ていたのですが、それでも足りなかったと思います。

桐光学園
鈴木勝大監督
桐光学園にはハンドボールの文化がなかった。フットボールでは劣っていたとは思いません。勝負の厳しさを改めて教わりました。(選手たちは)追いつかれたけど、自発的に声を出してモチベーション高くやっていました。うちのスタイルは、今日見に来てくれたお客さんが何かしら、感じとれるものがあったのではないかと思います。(⑨小川選手について)彼のストライカー気質の性格は、プロの世界でやっていける可能性はあると思いますので、高校生活で培ったものを生かして、Jリーグでもがんばってほしいと思います。U-18日本代表に選ばれたりして、PKをひとつ決めないことが、世界への扉を締めてしまうこともあります。昇格や降格、得点王に絡んでいく中で、ひとつのゴールが人生を左右してしまうのがプロの厳しい世界です。彼の次のステップはそういう世界なので、もっと精度を上げていってもらいたいなと思います。

⑨小川航基
悔しいです。2点取りましたけど、(負けたので)意味がないです。(PK失敗は)気持ちの部分が未熟だったと思います。(高校3年間で学んだことは)仲間と一緒にひとつの目標に向かって戦ってきたことです。(プロ入り後は)J1で得点王を早い時期に、海外でプレーしたいです。必ず、日本一のストライカーになります。

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