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第90回全国高校サッカー選手権大会 レポートコラム

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トーナメント表
大会概要
2012/1/5

第90回全国高校サッカー選手権大会 準々決勝 四日市中央工-中京大中京

寺下友徳(フリーライター) 取材・文

12年1月5日(木)/12:05キックオフ/東京都・駒沢陸上競技場/観客3788人/試合時間80分

四日市中央工
1-1
1-1
PK
4-1
中京大中京
田村(前半35分)
浅野(後半40+1分)
得点者 宮市(前半17分)
河合(後半8分)

「あと1勝で夢の国立到達」の緊張からか、前半はお互い中盤が間延びしたまま、ボールが両チームのペナルティーエリアからペナルティーエリアまでを行き交う展開。そんな中、中京大中京は17分に相手プレスの弱さを突き、ゴールやや左30メートルの位置からエースの⑲宮市が今大会3得点目となる豪快ミドルをたたき込み先制点を奪う。が、「ボールを奪った後にサイドで基点を作る」(樋口士郎監督)約束事を徹底した四日市中央工も、その後は徐々に劣勢を挽回。34分に左サイドに流れたボランチ⑰國吉からサイドチェンジを受け、ペナルティーエリアに入り込んだ⑧寺尾がPKを獲得。このPKこそ相手GK①平岡の攻守に阻まれたものの、直後の35分には⑯浅野が右サイドを切り崩し、最後はグラウンダーのパスを受けた⑨田村がプッシュして同点。これ以上ない勢いを得て前半を折り返した。
後半も立ち上がりは四日市中央工が押し気味にゲームを進める。ところが8分、中京大中京はペナルティーエリア直前で直接FKを奪うと、左SBの⑪河合が壁の脇を低く通す技ありの左足シュート。後半最初のチャンスを生かし再び勝ち越した彼らは以後、J1名古屋の戦いを思わせる効率的な時間浪費を駆使し、国立初キップを目の前まで引き寄せる。
しかし、3回戦の立命館宇治(京都)戦でも後半アディショナルタイムで⑯浅野が同点ゴールを奪い、PK戦を制する粘りを見せた四日市中央工。ピッチ上の選手たち、ベンチで見守る首脳陣は誰もが「きっと何かある」と奇跡の瞬間を信じていた。
そして再び奇跡は起こる。後半アディショナルタイム1分、自陣でFKを奪った四日市中央工は、CB②坂がゴール前へロングキックを供給。折からの強風にも乗ったボールは「前半にPKを失敗したときは『やらかしてしまった』と思った」⑰國吉の頭を経て、「こぼれ球を狙っていた」⑯浅野の右足へ。ハーフボレーでボールをとらえた直後、駒沢陸上競技場には大歓声と悲鳴が響き渡った。
「PK戦に入った時点で勝ったと思った」四日市中央工・樋口監督の確信は、チームすべての確信でもあった。迎えたPK戦では後攻の中京大中京が3人中1人しか決められなかったのに対し、四日市中央工は4人全員が成功。三重県勢としては第86回大会の津工以来4年ぶり、同校としては帝京(東京A)との両校優勝となった第70回大会以来、実に20年ぶりとなる国立進出は、またも奇跡的なゴールによってもたらされたのであった。

中京大中京の「捨て身」で生じた
四日市中央工の「思わぬ」苦戦

「ゲームのあらすじ」があらすじにならないほどのシーソーゲームとなったこの試合。「JFAプリンスリーグU-18東海1部」(以下、東海プリンス)でも雌雄を争ったライバル同士の激戦にふさわしい素晴らしい内容であった……と本来ならいいたいところだが、四日市中央工の側から見れば、思わぬ苦戦を強いられた80分間だったとも取れる。

 なぜあえてそう記すのか。東海プリンスでの2度の対戦では、4月23日の第2節こそ今回と同様に、終了直前に追いつく展開で引き分けているものの、9月19日の第9節ではリーグ得点王の⑯浅野拓磨と⑨田村翔太の2年生2トップが4点ずつを奪い前半で8-0、終わってみれば11-2の記録的スコアで四日市中央工が勝利。主将の⑰國吉祐輔いわく「相手には失礼ですが、中京大中京の守備は崩壊していた」とはいえ、今日の一戦を前に彼らが精神的には絶対的優位性を持って臨んでいたのは間違いないからだ。では、なぜ彼らは苦戦を強いられたのだろう。その要因は中京大中京の大幅な戦術変更にあった。

「東海プリンスにおいて中京大中京はポゼッションをしてきたので、ウチはそこでカウンターを狙う形をとっていたんです。ただ、今大会で彼らがこれだけ蹴ってくるとは……。もちろん、済美戦のビデオを見て彼らが⑲宮市剛へ向かってロングボールを供給してくるのはわかっていたし、指示も出していたんですが、泥臭くきたことで間延びをさせられてしまいましたね」(四日市中央工・樋口士郎監督)。

 就任16年目。これまで百戦錬磨の試合経験を積んだ樋口士郎監督ですら戸惑ったのだから、ピッチ上の選手はなおさら。ボランチとして敵味方を一望する立場にある⑰國吉も、「以前はつないできたのに、⑲宮市のこぼれをトップ下の⑦藤橋弘貴が拾う形を徹底してきた」相手の変化を如実に感じつつも、「クリアも小さくて対応できなかった」と立ち上がりにチームは迷いの中にあったことを認めている。

 対する中京大中京の側からしてみれば、この混乱は「やり返してやる気持ちで臨んだ」彼らにとって「してやったり」の展開であった。「守備面のポイントは、中盤の両サイドと2トップに気をつけること、早いプレッシングに耐えること。そしてロングボールを多くしてプレスをずらす」(GK①平岡侑樹)ゲームプランどおりに進んだ序盤戦。その結末は17分、全くフリーの状態から⑲宮市が豪快に奪った中京大中京の先制ゴールにつながった。

 幸いにも前半のうちに同点とし、「両サイドのスペースを突く。ないしは2トップがスペースを作った逆サイドを突く」本来の戦い方をハーフタイムに見直したことで、致命傷には至らなかった四日市中央工ではあったが、奇跡の同点ゴールの陰に隠れた苦戦の原因を突き止めない限り、心技体に充実一途の尚志(福島)戦での苦戦は必至。中京大中京が捨て身で与えた教訓を生かすためにも、3度目の「不思議な運」(樋口監督)、その先にある10年ぶりの頂点到達を引き寄せる対応策を今一度練りなおす必要があるだろう。


(監督・選手コメント)
四日市中央工・樋口士郎監督

「今日は選手たちにプレッシャーがありました。僕が就任してベスト8は3回ありましたが、ここが一つの壁だったので。中京大中京は個々の能力が高い。そんな彼らに泥臭くやられたことで苦戦しましたが、途中から開き直ったことで選手たちのベクトルが合い、こんなこと(2試合連続アディショナルタイムでの同点弾)につながったと思います。⑰國吉を残り5分でトップに上げた時点で何かが起こりそうな予感はありましたが……高校サッカーは恐ろしいものですね」

四日市中央工・⑯浅野拓磨
「前半は全く自分たちの力が出せず苦しい展開でした。自分が流れてスペースを作らなくてはいけなかったのに、流れる時間すらなかったです。(アディショナルタイムの同点ゴールについて)⑰國吉さんが競り合いには勝つと思っていたので、こぼれ球を狙っていました。だから⑰國吉さんが頑張ってくれて、僕がたまたまそこにいただけです」

中京大中京・①平岡侑樹
「34分のPKストップはスカウティングで⑰國吉君の蹴る方向は把握していたし、そのとおり跳んだら止めることができました。最後は蹴るばかりになってしまって守りに入ってしまいましたし、僕らの側から見たら同点ゴールを奪われそうな雰囲気はありました。ただ、全体としてはPK戦でやられた以外はよくできたと思います。監督が今季から岡山哲也監督になって、ハードワークで走り勝つサッカーに180度変わった。最初は抵抗もありましたが、夏を越えて結果もついてくるようになったし、今はよかったと感じています」

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