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第87回全国高校サッカー選手権大会 レポートコラム Supported by gol.japan (株)カレッジリーグ エーライン事業部

gol.japan

卒業生に贈るメモリアルボール (株)カレッジリーグ エーライン事業部

トーナメント表
大会概要
2008/12/31

第87回全国高校サッカー選手権大会

清水英斗(ストライカーDX編集部) 取材・文

1回戦

12月31日(水)/12:05キックオフ/神奈川県・等々力陸上競技場/観客4300人/試合時間80分

野洲 1(0-0、1-0)0  岐阜工

得点者
(野)坂本

野洲、大苦戦!
“半分だけ”セクシーフットボール

 滋賀県と岐阜県は、地図上で隣りに位置している。そのため、両県の強豪校である野洲と岐阜工は、組み合わせ抽選で対戦が決まる前から、すでに練習試合を2回行っていたらしい。結果は野洲の1分1敗。互いのサッカースタイルは熟知している。

「もっと東北などの(全く知らない)高校だったらよかったんだけど……。抽選が終わってからの1カ月半がくせ者。この期間を使って、1回戦の相手は野洲を研究することができる。今日はやりにくい相手だった」(野洲・山本佳司監督)

 前半は、岐阜工が野洲を圧倒した。

 野洲の縦パスに対して、岐阜工は常に挟み込んでプレッシャーをかけてボールを奪い、それを速いスピードで展開していく。ボールを巧みに引き出していた⑩田中義樹を中心に、ほとんどワンタッチのみでアタッキングサードまで持ち込み、何度もビッグチャンスを作った。

 岐阜工は、ボールを奪ってからの切り替えが驚くほど速かった。3本程度の正確なワンタッチパスワークで、一気にDFラインの裏を突いていく。そこから仕掛ける個人の力も十分だ。前半24分には⑦名和貴大、29分には⑨高橋祥平がビッグチャンスを迎えるが、惜しくもシュートを決めきれない。

「サッカースタイルはジャンケンによく似ていて、相性というものがある」(山本監督)

 こうなると野洲は、岐阜工の高速カウンターを恐れて、思い切って人数をかけたサポートをしづらくなってくる。それが野洲の持ち味であるクリエイティブなプレーの足かせとなり、悪循環に陥っていく。前半の野洲は、シュート1本、CK3本。対する岐阜工は、シュート5本、CK8本と数字上でも圧倒。結局、前半は野洲のよさがほとんど見られなかった。

 ところが、この流れが「ガラッ」と変わったのが後半だった。

 野洲というチームは、スタイルがピタッとはまると、手がつけられなくなるほどの強さを発揮する。後半の開始直後からスクランブル攻撃を仕掛け、岐阜工を自陣に押し込んでいく。この野洲の攻撃を、岐阜工が「受けてしまった」ことが、今日のゲームの分かれ目だったと思う。

 前半はハーフラインのやや後ろ辺りでボールを奪えていた岐阜工だったが、後半の守備エリアは明らかに下がった。岐阜工が攻撃に転じても、相手ゴールまでの距離がありすぎるために、自慢のダイレクトプレーも効果を発揮することができない。ここで野洲の攻撃に対して、勇気を持ってDFラインを高く保つことができれば……、もっと野洲を困らせられたのかもしれない。

 野洲のパスがリズムよくつながるようになってくると、コンビネーションはさらに向上する。周囲のサポートの質がどんどん上がり、スイッチ、オーバーラップで岐阜工のマークをかき回していく。四方八方で質の良いサポートができているので、野洲のトリッキーなヒールパスも増えて、プレーの中に、クリエイティブな遊び心が見えてきた。これこそが野洲の誇る、セクシーフットボールだ。

 その中でも特筆すべきは、司令塔の⑧潮入啓太。テクニシャンぞろいの野洲にあっても、彼のパスセンスは一際まぶしい輝きを放っていた。イニエスタばりのノールックパス、ロナウジーニョばりの首振りフェイントパス、クアレスマばりのアウトスライス回転パス、デル・ピエロばりのダイレクトヒールパス。どれもこれも、世界のサッカーを見ているような美しいパスばかりだった。彼の非凡なセンスは、間違いなく天性のモノなのだろう。

 こうなると、野洲のパスワークにほんろうされる岐阜工は、前半飛ばしたこともダメージとなって、次第に運動量が落ちてくる。野洲は、フィールドプレーヤー10人全員が、どこからでもドリブルで仕掛け、どこからでもスルーパスを出すことができる。まさに「トータルフットボール」だ。自由な野洲の攻撃が、ボディーブローのように岐阜工を追いつめていく。

 野洲は後半22分、⑧潮入のノールックスルーパスから⑩坂本一輝がシュート。さらに23分には、途中出場の⑮卯田堅悟のスルーパスから⑭梅村崇がクロスを送り、再び⑩坂本一輝が流し込もうとするが、岐阜工GK⑫山田健太に足を伸ばしてボールをはじかれ、ビッグチャンスを逃がす。

 野洲はこれらのシーン以外にも多くのチャンスを作り、後半はシュート12本、CK2本を記録。対する岐阜工は、シュート1本、CK0本と、完全に守勢に回り、脅威の粘りで、なんとかPK戦に持ち込もうとする。どんなにスルーパスを通しても、クロスを上げても、野洲はなかなかシュートを決めることができない。

 ところが、観客の気持ちがPK戦に移りかけた、いや、すでに移っていた終了間際の後半39分、決着は何ともあっけなかった。野洲のGK①横江諒が蹴ったロングキックのこぼれ球を、⑧潮入がDFラインの裏へ浮き球パス。ここへ⑩坂本が走り込み、右足で流し込む。ここまで数多くの決定機を外したエースが、ついに待望の先制点を挙げた。

 あれだけ崩しても崩しても、なかなか決まらなかった1点。それが終了間際に、GKからわずか2本のパスで決まってしまうのだから、サッカーの神様ってやつは、本当に気まぐれな人なんだと思う。しかし、それをたぐり寄せたのは、自分たちのサッカーを信じて、最後まであきらめずにプレーを続けた野洲のメンタリティーに違いない。シュートの正確さ、いわゆる決定力に不安を残すものの、2回戦以降の野洲がどんなサッカーを見せてくれるのか。非常に楽しみになってきた。

野洲・山本佳司監督
「前半、岐阜工は奪ってからの攻撃がめちゃくちゃ速く、ウチはそれを追い切れなかった。後半は中盤が緩くなってきたので、⑧潮入と⑮卯田がスルーパスの基点になってくれた。PK戦にはしたくなかった。最後はワンボランチにして攻撃を仕掛け、何とかしようとした矢先のゴールだった」

岐阜工・清本勝政監督
「前のほうでボールを奪う攻撃が、後半は全くできなかった。PK戦になってくれればと、心のどこかで思ってしまったのが僕の弱いところ。選手たちは奇跡的な守備で、何度もシュートを防いでくれていた。野洲は、シュートが決まらなくても集中が切れず、同じことを最後まで繰り返してきたのはさすがだと思う。全国で勝つためには、まだまだやるべきことがたくさんあると感じた」

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